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「そうだったんですか? ガネット?」
パトリックが問いかけると、ガネットは三角座りの膝の上で、キュッと握り拳を作った。
「……いし……」
「石?」
「綺麗な石があったから……お兄様にあげたら、喜んでくれるかなと思って……」
ガネットの答えに、ナターシャはやはりと頷き、パトリックは軽い衝撃を受けた。
ガネットは日々、いろんな場所を歩き回っては、アリストになにかいいものを持ち帰れないか探している。
そんな時、チミチミ池の端っこに光る石を見つけて、喜んで取りに行った。が、足を滑らせて見事に池にはまってしまった、というわけだ。
小さな子供が親に贈り物をするのと同じように、ガネットはアリストに感謝の気持ちを伝えたかった。だけど、それだけじゃない。
こんなに役立たずでは、いつかまた捨てられてしまうのではないかと……そんな恐怖心がガネットの根底にはあった。
「そう、あなたはとてもがんばったんですわね。だけど、それでアリストは喜びましたか?」
ナターシャの質問に、ガネットはふるふると首を横に振った。
「け、結局取れなかったし」
綺麗な石はガネットと一緒に池に落ちてしまい、どこにいったかわからなくなってしまった。
だが、問題はそこではない。
ガネットは勘違いしているのだ。
アリストが喜んでくれなかったのは、なにもプレゼントできなかったから。
アリストが少し怒って見えたのは、迷惑をかけてしまったせいだからだと。
その間違いに気づいたナターシャは、ガネットに真実が伝わるよう、ある質問を投げかける。
「もし、アリストが大怪我をして、あなたにとても綺麗な宝石を持って帰ってきたとしたら、あなたは心から喜べますか?」
それを聞いたガネットは、は? とでも言いたげな顔つきでナターシャを見た。
ガネットの恩人であり、尊敬するアリスト。そんな大事な人が大怪我をするなんて……ガネットは想像しただけでも胸が苦しくなった。
「……な、なに言ってんの、そんなの絶対嫌に決まってるでしょ、宝石なんかよりもお兄様の方が大事――あ……」
ガネットは自分が漏らした本音に、大切な答えが含まれていることに気づいた。
言葉を切って、真実に至るガネットを、ナターシャは温かな気持ちで見守る。




