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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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6-10

 ナターシャは両手のひらをガネットに向け、パトリックは左手に魔術書を、右手をガネットに翳していた。

 崖の先端が崩れ落ちた瞬間、ナターシャは聖女の力でガネットをバリアーで包み、パトリックは魔術書を出現させ、黒魔術で岩を攻撃し粉砕していた。

 やり方は違えども、二人ともガネットを守るべく最善を尽くしていたのだ。

 ナターシャが両手を下ろすと、ガネットを覆っていた球体が消え、互いを隔てるものがなくなる。

 遠巻きにナターシャたちと目が合ったガネットは、膝立ちしたままの状態で固まった。

 ガネットの無事を確認したナターシャは、肩を怒らせながら大股開きで歩き始める。

 そのままズンズンと一直線に近づき、ガネットの目の前まで来ると右手を振り上げた。

 叩かれる――?

 そう感じたガネットは身を引こうとしてバランスを崩し、再び地面に尻もちをつく。

 ナターシャはそんな彼女の前にしゃがみながら、勢いよく手を振り下ろす……ふりをした。

 実際はガネットの左頬間近でピタッと手を止めると、力を緩めてペチッとガネットの白いそれを叩く。

 いや、叩いた、というよりも、弾いたといった方が正しいかもしれない。それくらい優しい触れ方だった。アリストにビンタした時とはえらい違いだ。

 女騎士であった前世と同じく、基本的に女子供には優しいナターシャ。

 しかし、言うべきことは言わねばならない。


「あなたは、もっとご自分を大事にするべきですわ!」


 予想外の軽い叩き方に拍子抜けしていたガネットは、ナターシャの大きな声に身体を跳ねさせた。

 目の前にあるナターシャの綺麗な顔があまりに真剣で、ガネットは息をするのも忘れる。

 ナターシャは硬直したガネットをしばし無言で見つめた後、地面に両膝をつけてしっかりとガネットと向き合う。当然ナターシャの聖女服は湿った砂で汚れるが、そんなことはどうでもいい。

 それからナターシャは、緊張した空気を和らげるように小さく息をついた。


「わたくしやパトリックがいたからいいものを……この世には危険なことがたくさんあるのです、ご自身で対処できないのなら、せめて信用する方々の言うことは聞かなくては」


 ナターシャはガネットに言い聞かせるように、落ち着いた口調で話した。

 しかし、その大人びた余裕のある対応が、かえってガネットの苦悩に火をつける。

 動きを止めていたガネットは、次第にカタカタと震え始め、声を絞り出す。

 

「……るい……」

「え?」

「……ずるい!」


 ガネットはハッキリそう言うと、ナターシャをキッと睨みつけた。ガーネットのような赤い瞳に、切なげな雫を蓄えながら。

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