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「魚釣り? どうやってするんですの?」
「さっきガネットを釣り上げた時と同じ要領ですよ、集中して生き物の動きを察知したら、そこに魔力をあててチョチョイッと」
右手人差し指をクイクイッと動かしながら、真剣な面持ちで説明するパトリック。
聖女にとって魔法とは、世のため人のために使う神聖な能力……とされているので、個人的な利便性のために使用することはよしとされていない。
が、パトリックおよび、ロッドベリルのメンバーは、かなり自由に魔力を活用しているようだ。
国で禁じられている転移魔術から、バレたらちょっと注意される程度の食料調達にまで。
「……なんだか、本当に魔力って便利ですのね」
そう呟いて一拍置いてから、ナターシャはなんだか面白くなってきた。
修道院では妬みを買わないために、自分の能力を最大限抑えてきた。
だが、ここではそんなことをする必要はないのだ。
セシリアもジオバールもいない、修道院のように窮屈な制約もない……ナターシャにとってここは、本当の楽園になりうるかもしれない。
そんな予感がしたナターシャは、俄然やる気が出てきた。
「そうと決まればわたくしもやってみせますわよ! どうせなら、どちらがたくさん釣れたか勝負……」
ナターシャが腕まくりをしながら、聖女らしからぬ勝負を持ちかけようとした時だった。
海辺を見渡したナターシャは、ふと、ある気配が消えていることに気づく。
突然言葉を切り、丸くした目をあちこちに動かすナターシャに、パトリックも同じことを察した。
ガネットがいなくなっていたのだ。
「ガネット、ガネット! どこにいるんですか!?」
パトリックが急いで砂浜を蹴り、声を張って周辺を見回す。
ナターシャもそれに続き、忙しなく頭を動かしながら、海辺を小走りに行く。
そうして二人があちらこちらを探索しているうちに、海辺の端の方まで来ていた。
するとそこで、パトリックが目当ての人影を見つける。
砂浜に立つパトリックの視線のずっと先、白い砂と黒い石が混在する波打ち際に、その姿はあった。
ここは広大な入江のようになっていて、平らに続く海を、突き出した背の高い岩場が挟む形になっている。
ガネットはその小さな崖のようになった岩の下に立っていたのだ。




