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「そんな経緯もあり、我々は貴族や騎士たちから嫌われているんです」
パトリックが再び話し始めたことによって、ナターシャの中に芽生えつつあった感覚はふわりと消えた。
「ただでさえソリスティリアは剣士を敬う風潮が根強いですからね。特に、あのジオバールとかいうミカエリアス聖騎士団の長は、やけに団長に敵意を持っていますよ」
「ジオバールが……?」
「はい、以前は王都からの依頼で、凶暴な魔獣を討伐しに行くこともありました。その際、何度かジオバールと会ったことがあるんです。が、団長が先に魔獣をやっつけてしまうので、ジオバールは役目を奪われたといった感じで、ひどく苛立っていました。その上サンタウォーリアで団長に助けられた形になったんですから、心中穏やかではないかと」
ミカエリアス聖騎士団とロッドベリル魔術団が対立しているとの噂は聞いたことがあったが、やはりミカエリアスが一方的に対抗心を燃やしているようだ。
その理由を知ったナターシャは、本当にくだらないとため息をつく。
アリストのおかげで国を守れたなら、王宮付きの騎士として感謝するのが筋だろうが、結局ジオバールは自分のことしか考えていないのだ。
「なるほど……とんでもない逆恨みですわね」
心底あきれた様子のナターシャを見るパトリックの目は、初めて会った時よりもずいぶん穏やかになっている。
「……私の言うことを信じるんですか?」
パトリックの素朴な質問に、ナターシャは今更と思う。
とはいえ、自分が転生者で、前世のジオバールのことも知っているから……とは言えない。
ゆえにナターシャは、今通じる言葉で率直な意見を述べる。
「信じますわ、あなたがそんな悪趣味な嘘をつくとは思えませんので」
パトリックの言うことは信用に値する、そう判断したナターシャの目は実に真っ直ぐだった。
パトリックは胸の辺りが温かくなると、慣れない気持ちを誤魔化すように、ゴホンと一度咳払いをする。
「……少し長話が過ぎましたね、では、魚釣りでもしましょうか」
ナターシャから目を逸らして仕切り直しをするパトリック。
話し込んでいて忘れかけていたが、ようやく食料調達という、当初の目的に触れた。
しかし、ナターシャはパトリックを眺めて首を傾げる。
思いきり手ぶらだ。釣り竿も餌もなにも持ってきていない状態で、どうやって魚釣りをしようというのか。




