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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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6-6

「アリストが……」

「……不快になりましたか? それとも軽蔑を?」


 躊躇いがちに呟くナターシャに、パトリックが鋭い質問をぶつけた。

 やや面食らった様子のナターシャを、パトリックは真剣な眼差しで見つめる。

 どんな理由があろうと、人殺しは人殺し……聖女になったばかりのナターシャには受け入れ難い事実かもしれない。

 そう思ったパトリックは、ナターシャを試すような気持ちもあった。

 僅かな沈黙の間に、ザザン……と波が押し寄せる。

 それがすっと引いていく頃、ナターシャはふっと薄い笑みを浮かべた。


「そうですわね、実に不快で軽蔑すべき対象ですわ……ミカエリアス聖騎士団は」


 ナターシャの回答に、パトリックの深くなりつつあった眉間の皺が、一気に浅くなりオレンジの瞳が開かれる。

 前世、貴族であったジオフォードは、分不相応なほどプライドが高く、非常に欲深かった。

 ジオバールに転生した今世でも、その性質は見事に受け継がれたようだ。

 なんせ拡声器で勝利宣言をしたのは、ジオバール本人だったのだから。

 ロッドベリルの功を横取りして、ミカエリアス聖騎士団の名を上げるだなんて、いかにもジオフォード……もとい、ジオバールがやりそうなことだとナターシャは思った。

 同時に、それはアリストの決心を踏み躙る愚行であるとも。


「あんなに繊細なアリストが、大勢の人を殺めて平気なはずがありませんわ……」


 切なげな表情で零すナターシャに、パトリックは救われたような気分になった。

 聖女の中にも、アリストを理解してくれる者がいると知ったからだ。

 パトリックはアリストに心酔しており、その戦闘スタイルや能力に大きな憧れを抱いている。だが、それが及ぼす影響……例えば人命を奪い去ることなど……自体が正義だとは思っていない。

 だからこそ、アリストの優しさに甘える結果になったことを、深く反省し、同時に感謝もしているのだ。


「……団長は私たちがやる前に、やってくださったんですよ、自分が罪を負うために」


 アリストは優しすぎる。それはパトリックを含め、ここで暮らすみんなが知っていることだった。

 誰よりも繊細な心を犠牲にしてでも、仲間たちを守りたい使命感が勝る。

 当時、戦場に立ったアリストが、一体どんな気持ちで巨大な魔力を解放したのか。

 その気持ちを考えると、ナターシャは胸の奥がキュッと痛む。

 今世では初めての感覚だ、じゃあ、前世では……?

 そう考えた時、ナターシャはなにか思い出しそうになった。

 前世で同じ感覚に見舞われたことがあったような、不思議な気持ちに囚われたのだ。

 しかし――。

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