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「……聞いたことはありますわ。確か、五年ほど前、隣国のサンタウォーリアとソリスティリアが戦争していて……ソリスティリアが劣勢だった状態から、ミカエリアス聖騎士団が一気に押し返して逆転勝利したとか……」
どこか他人事のように話すのは、当時、ナターシャは聖女見習いであり、一般人も兵として駆り出されたわけではないからだ。
戦争はあくまで騎士や魔術師、回復などのサポート役で入る聖女など、普段から特殊な訓練を受けている、所謂玄人同士の戦い。そこが突破されれば一般人に危害が及ぶこともあるが、サンタウォーリアではそこに至る前に終戦したため、一般人は本当に戦争をしていたのか実感が湧かないくらいだった。
だが当然、王都からの通達で全国民に開戦と終戦の知らせは届いた。
ナターシャも覚えている。戦争が終わったとされるその日、町中に設置されている拡声器から聞こえた内容を。
『劣勢とされたサンタウォーリアの戦争だが、ミカエリアス聖騎士団の活躍により、華麗なる逆転劇を収めた。よって、此度の戦争は我がソリスティリア王国の勝利とする』……
「その通りですよ、公にされている事実としては、ね」
パトリックは僅かに眉を顰め、当時を思い出した。
「ですが、真実は違います。押し返したのはミカエリアス聖騎士団ではなく、ロッドベリル魔術団です」
衝撃の言葉に、ナターシャはパトリックを凝視する。
あれほど夢中になっていた海の美しさも、さざなみの音も、ナターシャの頭から消え失せた。
「当時十三歳だった団長に、王から招集命令がかかったのです、ロッドベリルを結成して、二、三年といったところでした」
ナターシャが驚き戸惑っている間も、パトリックはかまわず話を続ける。
ナターシャはひとまずパトリックの言うことを引き取ると、浮かび上がる疑問を口にする。
「テレス国王陛下から……? 他の魔術団にも?」
「いいえ、うちだけです、というより、団長に助けを求めるような形で」
テレス王がアリスト個人に助けを求めた理由も気になるが、ナターシャはそれ以前に引っかかるところがあった。
パトリックの話から逆算すると、アリストは現在十八歳。五年前の戦争時は十三歳で、そこからさらに二、三年前となると……
「ちょ、ちょっと待って、じゃあ、アリストは、その、十歳くらいの時、すでにロッドベリルを結成していたということ?」
「そうですよ」
あたかも当然のような口ぶりのパトリックだが、いやいや待てとナターシャは思う。
そして魔術師になるための学び舎、魔術学校についての知識を呼び起こした。




