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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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6-2

「海に面しているのではなく、ここもティルバイトの一部なんですよ」

「えっ……海も?」

「はい、ソリスティリア王国の、この辺りの海域は我がロッドベリル魔術団……アリスト団長の領地です」


 なんと、この海までもが、アリストが所有する領地であった。

 ソリスティリア王国は島国ではないので、周りのほとんどが他国に面している。

 だが、南側の一部だけ海に面している箇所がある、それがここだったのだ。

 修道院を出て、ティルバイトに向かっている時、ずいぶん南下しているなとナターシャは思っていたが、その通りだった。

 ティルバイトはソリスティリア王国の最南端を、守るかのように佇んでいた。

 ようやく位置関係を把握したナターシャは、なんと自分の望み通りのロケーションかと思った。

 かつてナタリーが生きた国は、海に面していなかったため、その存在は架空に近かった。

 噂に聞いたことがある、いつか見てみたいと思っていた海が、今目の前にある――

 ナターシャは視界に収まりきらない広大なそれを、夢中で目に焼きつけた。


「わたくし、海って初めて見ましたわ」

「修道院は山手ですからね」

「もしや、昨夜の食事にタコらしきものが混じっていたのは……」

「ここで獲れたものですよ。食料は町に出て調達する時もあれば、ここの魚介類をいただくこともあります」

「なるほど……」


 昨夜、アリストが振る舞ってくれた謎料理、そこに魚介類らしきものが多く見られた理由に、ナターシャは納得した。

 作り物のように綺麗な海だが、よく見ると色鮮やかな魚が泳いでいるのがわかる。この浅瀬でもたくさん見えるくらいだ、奥に行けばさらに多くの生物が暮らしていることだろう。

 それだけ資源が豊富なら、海産物に困ることはなさそうだ。


「それにしても綺麗な海ですわね」


 ティルバイトの領地だからか、周りにはナターシャたち以外誰もいない。贅沢極まりないプライベートビーチである。

 しかし、ここまで静かなことには、別の理由もあった。


「この海域はティルバイトに続いていると、よその国もわかっていますから、誰も近づこうとしないんですよ。だから静かで美しいんです」


 ナターシャは海から目を離して、隣に立つパトリックを見た。

 パトリックは振り向かず、海のずっと向こうを見ている。


「ティルバイトは、他国からも敬遠されているんですの?」

「敬遠というより恐怖です、ロッドベリル魔術団……もとい、団長に対する」


 アリストを恐れているということは、国外にまでその強さが知られているのか。

 だとしたら、どうやってそんな情報が流れたのか、誰かが他国で話したのか……ナターシャが考えていると、パトリックがその答えを口にする。


「ご存知ありませんか? サンタウォーリアの奇跡」


 その文言に、ナターシャは動きを止めた。

 ソリスティリア王国の民なら、誰もが知る言葉だったからだ。

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