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「ジオバール様がお目見えよ、あなたに通達を届けに来たみたい」
ナターシャがセシリアと同じくらい、聞きたくない名前が出てきた。
魔力テストの結果、合否はその場で直接伝えられるが、後の処遇は書面で知らされる。
それにしても早すぎではないかと、ナターシャは思う。
過去最低の成績を残した聖女見習いには、即座に王都を去ってほしいという意気込みが感じられた。
「さあ、今すぐ一緒に行きましょう、聖騎士団長を待たせてはいけないわ」
「……わたくし一人で」
「ダメよ、あまりのショックで倒れてしまうかもしれないのだから、支える私がそばにいれば安心でしょう?」
やはり、セシリアはなにか知っているかのような口ぶりだ。
これからものすごく悪いことが起きる。だからそれをこの目で見たいとでもいうのだろうか。
ナターシャがそう感じるほどに、セシリアのタレ目は三日月型に歪んでいた。
ナターシャは部屋を出ると、仕方なくセシリアと廊下を歩き、階段を下りた。
修道院の広間には、未だ興奮冷めやらない聖女たちが集まって会話をしている。
その横を気にせず通過しようとするナターシャだったが、セシリアはなにを思ったのか足を止めた。
そして広間にいる聖女たちに向かって声を上げる。
「今からナターシャの処遇が発表されるそうよ、みなさんも一緒にどうぞ!」
溌剌とした声でみんなに呼びかけるセシリアに、ナターシャはギョッとした。
まるで面白いことを見物しに行くかのように、みんなに誘いかけ、連れ立っていくというのか。
聖女たちはおしゃべりを中断して、セシリアの方を見た。
そして刹那の沈黙を破ると、みんな顔を見合わせてクスクスと笑い始めた。
「一体どこに飛ばされるのかしら」
「気になるわね、見に行きましょうよ」
聖女たちのヒソヒソ話は、すべてナターシャの耳に届いていた。
――どうぞどうぞ、お楽しみくださいませ。わたくしはあなた方以上に楽しみにしておりますからね!!
ナターシャが暗い表情の下でそんなことを宣っていようとは、誰も想像できないだろう。
こうして大勢の野次馬たちとともに、ナターシャとセシリアは修道院を出た。
正面の扉を開くと、すぐ前方に馬に乗った男性が見える。
短めの黒髪に茶色い瞳、キリッとした顔立ちの青年は、先ほどテレスの傍らにいた、王直属のミカエリアス聖騎士団の長である。
聖とつくだけあって、聖女と同じような、純白に金の刺繍が入った騎士服を着ている。
その中身は、清廉な白に反して真っ黒だったが。
――そうそうそうそう、こいつ、こいつですわ、わたくしを陥れたもう一人の輩は……。
ナターシャはジオバールの顔を見ると、改めて前世を思い出す。
ナターシャが断罪された原因、それをセシリアと一緒に捏造したのが、このジオバールなのだ。
前世の名はジオフォード。今世と同じ貴族であり、セシリアとできていた。




