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「う、うん、わかった、そ、そんなことなら、ぜ、全然、大丈夫」
――そんなこと?
王の許可を取るのに、まるで大したことないといった感じのアリスト。
まさか本当に王と繋がりがあるわけではなかろうな、と考えるナターシャだが、今大事なのはそこではない。
ここの生活を守るため、アリストが式典に参加する。そのミッションをクリアできればよいのだから、王と繋がりがあろうがなかろうが、許可さえ取ってくれれば問題ないのだ。
「それは頼もしいですわ、どうぞよろしくお願いいたします」
「う、うん、よ、よろしくね……」
人差し指同士をツンツン合わせて、もじもじしながら答えるアリスト。
ドSかと思えば、闇堕ちしたり、恥ずかしがったり……なにかと忙しい魔術団長だ。
と、そこでアリストの身なりに視線を置いたナターシャは、あることを思いつく。
「ですが、式典に参加するなら、服装を改めなければいけませんわね」
「え……?」
「祭り事やかしこまった席では、普段着は相応しくありません。建国の式典ですから、明るく華やかな正装がよろしいかと。修道院にいた指導者である聖女も、そのような時だけは、特別に美しい衣装を身につけていましたから」
冠婚葬祭の場面に合わせた装いをすることは、紳士淑女の嗜みであり、当然のマナーである。
今回は建国百周年という、滅多にないめでたい祭典なので、王侯貴族たちは普段の夜会なんかよりさらにめかし込んでくるだろう。
そんな中で、アリストだけローブのまま……というわけにはいかない。
「あ、そ、そっか、た、確かに、そうだね……」
アリストの今初めて知りました、といった感じの反応に、ナターシャは訝しげに眉を顰める。
「……まさか、以前お二人で行こうとした時、ローブ姿だったわけではありませんわよね?」
じとっとした目つきで、すぐそばに立っているパトリックを見上げるナターシャ。
するとパトリックはなにを思ったのか、ものすごく悔しそうな顔をした。
「……な、なんと……そうと知っていれば、団長をこれでもかと着飾っていったのに……!」
パトリックにとっては、マナーを理解していなかった恥ずかしさより、アリストの普段とは違う姿を見る機会を逃してしまったことの方が重大なようだ。
つまり、やはり二人はローブのまま、かしこまった席に参加しようとしていたわけだ。
パトリックを含め、団員はみんな平民出身、パーティーのような煌びやかな場所とは無縁に生きてきたので、マナーを知らなくても無理はないが。




