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「で、ですがわたくしは、貴族でもなければロッドベリルのメンバーですらありませんわ……付き添いならパトリックがした方が」
「その方法を、私が今まで取らなかったとお思いですか?」
「思いません……」
いつの間にかそばまで来ていたパトリックが、立った状態でナターシャを見下ろしながら言った。
アリストとパトリックの付き合いは長い。今まであらゆる手段を尽くしたに決まっているが、それでも上手くいかなかったということだ。
「通常、招待されていない者が行くのは禁止なんですが、団長の場合はサポートといった形で一名付き添いが可能です。私が最初、王都に問い合わせた時に、そう回答があったので……まあ、結局、私がご一緒しても、会場の中まで入ることはできませんでしたが……」
心なしか少し残念そうに見えるパトリックだが、ナターシャの同行について反対はしなかった。
本当は自分が一緒に行きたかったが、ダメなら仕方がない。パトリックの一番の希望は、アリストにできる限り心穏やかに式典に出てもらうこと。それが叶うのなら、他のことは目を瞑ろうと思った。
きちんと状況判断ができるアリストの腹心、これで変な性癖さえなければいいのだが。
それにしても、アリストだけ付き添いがオーケーとは、なかなかの特別待遇ではないかと思うナターシャ。
一人で行くのが難しいので介助枠ということだろうが、そこまでして参加を促すとは、とても王都の連中に嫌われているとは思ない。
もしかしたら他にぶっといパイプでも持っているのだろうか、例えば王とか……なんて、それはないかとナターシャは自分に突っ込んだ。
そして腹を決める。ここまで言われて断る選択肢はない。
「そうでしたのね……かしこまりました、わたくしでよろしければ、ご一緒させていただきますわ」
「ほ、ほんと……!?」
「ええ、ですが、どうか国王陛下の許可をお取りください。わたくしのような者が、なんの断りもなく大事な式典に参加しては、周りも驚かれるでしょうし、場の雰囲気を損ねてしまう恐れもありますので」
銀灰の瞳を輝かせるアリストに、ナターシャは言うべきことを言った。
王の許可なしにティルバイトを出たら、確実に処刑台行きだ。それだけは回避しなければならない。
実は聖女ではなく追放者としてここに来ました、と……言ってしまおうかとも考えたナターシャだったが、さすがに追放者となれば、周りが黙っていないかもしれない。
それでアリストの態度が変わるとは思わないが、あえて今言う必要もないかと考え黙っておくことにした。
なにより、彼らにとって大切なティルバイトを、追放先に選ばれるような場所だと告げるのに抵抗があった。
そんなわけで、ナターシャの中ではいろいろ考えた末の頼みだったが、アリストは実にあっさりと返事をする。




