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「アリスト、あなたは真面目すぎるんですわ。けれど……それは短所ではありません、個性ですので直す必要はないんですのよ。他の者たちと同じになるなんて、もったいないことはしないでくださいませ」
――ボク、こ、このままでいいんだ……。
ナターシャの言葉に、アリストはそう思うことができた。
ならば、この自分のまま、新たな行動を起こすべきだとも。
アリストは一旦視線を落とすと、なにか決心したようにキュッと唇を結んだ。
そして再び開いて言葉を紡ぐ。
「……ぼ、ボク、い、行きたい……み、みんなのためにも、ち、ちゃんと、団長、したい……」
「団長……」
アリストの辿々しくも健気な台詞に、団員たちはみんな感激して胸を熱くしていた。
アリストはなにも、行きたくないわけではない。行きたいのに行けないから困っているのである。
そうだと感じたナターシャが、これは背中を押すしかないと考えたのだ。
だとしたら、アリストが行けるようにサポートするしかないと。
ナターシャはアリストの前向きな反応を見て、手応えを感じていた。
――これはきっといける……いや、絶対に行くんですわアリスト! わたくしたちのスローライフのために!
心の中で激しめに催促しながら、ナターシャは今か今かとアリストの言葉の続きを待っていた。
ナターシャが求めるのは一つ。アリストの『行く』の文字。
しかし、次にアリストの口から出たのは、ナターシャが期待したものとは違った。
「だ、だから……な、ナターシャ、い、一緒に来て」
今度はナターシャが疑問符を浮かべる番だった。
徐々に理解が及ぶと、ああ、あー、なるほど、はいはい、そう来ましたのねー、となる。
背中を押すだけのつもりが、まさか自分が誘われてしまうなんて……想定外の展開にナターシャは頭を悩ませた。
「な、ナターシャが、い、一緒なら、行く」
上目遣いに潤んだ瞳で見てくるアリストは、まるで捨て犬のようだ。
ワシャワシャされたせいで綿飴のようになった白髪が、さらに放っておけない雰囲気を演出する。
――ぐう……かわ……
庇護欲を刺激されたナターシャは、思わず二つ返事でオーケーしてしまいそうになるのを堪える。
アリストには借りもあるし、望むことならなんでもしてやりたいと思う。
だが、ここで忘れてはいけないのは、ナターシャは正式な聖女ではないということ。
魔力テストで最低な結果を出したナターシャは、下級聖女にすらなれず、罪人のようにティルバイトに追放されたのだ。
本来は大聖女の力を持っているが、現実は『聖女になれなかった追放者』……ゆえに、ティルバイトを一歩でも出たら処刑だと、ジオバールに言われていた。




