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「まあ、行きたくないのなら行かなくても……」
「私もそう言いたいところですが、なるべく大きな祭典には出席していただきたいんです」
難色を示すパトリックに、意外だと思うナターシャ。
アリスト狂のパトリックのことだ、てっきりアリストが嫌がるならすんなり認めると思っていたのに。
「それは、なぜですの?」
「貴族の爵位を持っている以上、国から金が出ていますからね。団長は金などいらないと爵位を拒絶されましたが、このような広い土地を所有するためには、爵位が絶対条件でしたので、仕方なく……」
パトリックがため息混じりに話した内容に、なるほどと頷くナターシャ。
ソリスティリア王国では、一定の広さの土地を所有するためには爵位が必要……つまり、爵位持ちの王侯貴族しか、広い土地を持つことが許されていない。
だからアリストは仲間たちとの楽園を築くために、仕方なく爵位を受け入れたのだ。
喉から手が出るほど、爵位を欲しがっている者たちも多いというのに……嫌々伯爵でいるなんて、アリストは相当な変わり者であり、やはり面白い人物だとナターシャは思った。
しかし、パトリックが言うことはもっともだ。
貴族にとって社交は仕事の一つなので、それを無下にするのは業務を怠っているに等しい。
どんな理由があれ、爵位持ちの貴族である以上、周りと足並みを揃えるのは大切なことなのだ。
「なるほどですわ……となれば、すべてのお誘いを拒否するのは、よろしくありませんわね」
「年に数回ある活動報告すら、私が行っているので、このままではロッドベリルのおかしな噂が横行する一方です。団長は無欲ですし、他者からの評価をあきらめておいでですが、私は団長の素晴らしさをもっとみんなに知ってもらいたいと思っています」
どうやらロッドベリルの悪い噂の原因は、社交を拒絶している団長……アリストのせいでもあるようだ。
大事な会議の場に、肝心の長が毎回不在となれば、誰だってよい印象を抱かないだろう。
そんなことを続けていれば、いずれ貴族たちに目をつけられ、問題視されるかもしれない。
そのことが王の耳に入り、最悪領地を没収……なんてことになれば、アリストの楽園、もとい、ナターシャのスローライフは終了してしまう。
それはまずい、非常にまずいと思ったナターシャは、アリストを式典に参加させる方法を探り始める。




