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「が、ガネット……た、助けてもらったのに、そ、その言い方はない」
アリストに注意されたガネットは、一瞬ビクッとしたものの、抵抗を試みる。
「だ、だって! 聖女はみんな敵でしょっ!? 魔獣が嫌いでロッドベリルを怖がって近づきもしない、ティルバイトの聖女が長続きしないのがいい証拠よ! どうせこのブスだってすぐに逃げ帰るに決まってるんだから!」
「ガネット」
アリストの声が低くなった。
瞬間、ピリッと緊張が走る。
それを感じたガネットは、怯んで口を結んだ。
このままパトリックにしたように、ドSな命令口調が出るか……と思いきや、暗く重い空気は、完全に膨らむ前にシュルシュルと終息した。
相手はまだ小さな女の子なので、その辺りはちゃんとわきまえているアリストである。
「……な、ナターシャは、そんな人じゃない、あ、後、ぶ、ブスでもない……ちゃんと、あ、謝って」
――あ、アリスト……! わたくしの心の友……!!
肝心なところもしっかり否定してくれたアリストに、心の中で拍手を送って歓喜するナターシャ。
アリストに忠告されたガネットは、真剣な面持ちでナターシャに向き合うと、申し訳なさそうに眉を下げた。そして――
「どーーーうも、さーせんでしたあーーーあ!」
偉そうにふんぞり返りながら、ものすごく癪に障るトーンで謝罪の文字を並べた。
――ああ、これは、余計に腹が立つやつですわ。
別に感謝してもらいたくて助けたわけではないが、口も態度も悪すぎだろう。可愛らしい見た目からは想像できない横暴ぶりだ。
ガネットは言いたいことだけ言うと、フンッとナターシャから顔を背けて、少し離れた場所にいるアリストに駆け寄った。
そして胸の前で両手拳を作り、前のめり気味にアリストに訴える。
「そんなことよりっお兄様! 身体も元に戻ったんだから、魔術教えてよ!」
ガネットのアリストに対する呼び方が、ナターシャは少し引っかかった。
そういえば、昨夜団員の一人が、ガネットはアリストの妹のような存在だ……と言っていたような。
妹の『ような』ということは、実の兄妹ではないのだろうが。
しつこく「魔術を教えて!」とねだるガネットに、無言でため息をつくアリスト。
周りの団員たちも特に反応を示すでもないので、こんなやり取りは日常茶飯事のようだ。
呪いを解く役目を終えたナターシャは、若干身の置き場に困り、アリストたちを傍観していた。
そんな彼女の元に、団員の一人が歩み寄る。




