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「では、浄化いたします」
そう言って間もなく、ナターシャの両手のひらから黄金色の光が漏れ出す。それは次第に濃い金色に変わり、ガネットの上部を覆うまでに範囲を広げる。
まるで太陽の光を浴びた宝石のように、眩いほどの輝きに、アリストを含む団員たちはみんな目を奪われた。
他の聖女の光はエメラルドグリーンなので、団員たちが金色の魔法を見るのは、もちろん初めてだった。
僅か数秒のうちに、ガネットの内に入り込んでいた呪いの影が消えてゆく。
すると同時に、ガネットの身体が収縮を始めた。
まるで水面が広がるように、静かにすーっと全身の幅が増していく。
ガネットの本来の姿はどんな感じなのか、もしかしたらものすごくセクシーな熟女だったりして……。なんて、ナターシャが考えを巡らせる間もなく、ガネットの動きはあっさりと止まってしまった。
ナターシャの中ではこれからだ、というところだったのだが、やはりもうピクリともしない。
相変わらず椅子に座って俯いたままのガネットは、先ほどより身長は二十センチほど伸びただろうか。ただ、体型は薄っぺらいままなので、そこまで劇的な変化は見られなかった。
――あんまり変わっていませんが、これでよろしいのでしょうか?
もしや中途半端に呪いが解けて、失敗したのではと心配になったナターシャだったが。
「すごい! よかったな、ガネット!」
「大したもんだ! すっかり元通りじゃないか!」
――あ、これが元々のサイズでしたのね。
団員たちの反応により、きちんと成功していたとわかって胸を撫で下ろした。
五歳くらいの幼女が十歳くらいの少女に戻ったということだ。ゆったりとしたワンピースを着ていたので、身体が戻っても破れることなく、ちょうどいい感じになっている。
魔術師たちが喝采する中、ガネットがようやく重い腰を上げた。
そして椅子の前に立つと、初めて真っ直ぐにナターシャを見上げる。
礼を言われるに違いないと思ったナターシャは、いいんですのよ、なんて謙遜の台詞を胸に用意しながら微笑んだ。が――
「ブス」
現場の空気が凍りつく。
驚愕の表情を浮かべる団員たちに、笑顔のまま石像のように固まるナターシャ。
――今……なんとおっしゃったのかしら? なにか『ぶ』と『す』を組み合わせた文字が飛んできた気がしますが、きっと勘違いですわね、うふふふふ。
ナターシャが現実逃避するのも無理はない、ナタリーであった前世から今まで、どれだけ悪口を言われようと、その言葉だけは浴びせられたことがなかったのだから。
しかし、ガネットはそんなことお構いなしに、ナターシャに詰め寄ると、思いっきり指差してきた。
「ブスブスブース! ドブスブスブスブスブース!!」
ブスと言いすぎてスブにも聞こえるし、なんならリズムに乗った歌の一種のようにも聞こえる。
さすがのナターシャも現実を受け入れ始めると、ピキピキと聖女の笑顔にヒビが走った。
――わたくしがブスなら、あなたは馬糞以下ですわね。
貼りつけた笑顔の奥で毒づくナターシャ。
自信家の彼女は自分が美しいことを認めているので、こんなふうに貶されると腑が煮え繰り返る。
しかし、ここで生きていくためには摩擦は避けたいところなので、どうにかして反撃を堪えた。
そんな様子を黙って見ていられなかったアリストが口を挟む。




