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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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52/309

5-5

「ここは……?」

「ま、魔術の、訓練したり、た、試しに使ったりするところ、こ、ここの部屋は、ぼ、ボクの魔力を、た、たくさん使ってるから、か、簡単には壊れない」


 アリストはそう言うと、合わさっている右側のノブを握ると、手前に引いて扉を開いた。

 すると中央の五芒星が半分に割れると同時に、中の様子が明らかになる。

 最初にナターシャの目に入ったのは、正面に座った幼女の姿。

 彼女は背もたれつきの黒い椅子に腰掛け、膝に手を置いて前屈みになっている。

 ナターシャは部屋に足を踏み入れると、室内を見渡した。

 なにも物が置かれていない、白い壁に囲まれただだっ広い空間、青白い照明の下、黒い床のど真ん中に、彼女はいた。

 ナターシャがゆっくりと幼児に近づいていくと、彼女が座った椅子の下に、大きな星の紋を見つける。

 扉にあったものと同じ色や形をしたそれは、直径一メートルはあろうか、彼女が座った椅子をまるっと囲っていた。

 そしてその後方には、ロッドベリルの団員たちが集結している。

 ローブを着た魔術師たちの前で、怪しげな紋の上に一人座らされた幼女。

 その異様な雰囲気に、今から悪魔的な儀式でも始まるのかと錯覚するナターシャだが、いやいや違うと自分の役割を思い出す。

 彼女は救済の対象者であり、生贄ではないのだから。

 気を取り直したナターシャは、幼女の前で足を止めると、目線が同じになるようにその場にしゃがみ込んだ。

 スミレのような紫色のツインテールに赤い瞳、小さな身体。やはりナターシャが森で遭遇した女児は、ガネットで間違いなさそうだ。


「初めまして、あなたがガネットさんですわね? わたくし、聖女のナターシャと申します」


 実はすでに会っていたことは誰にも言っていないので、とりあえずここは初めましてで通してみる。

 俯いたガネットの紫の前髪から、赤い瞳が覗く。しかしそれは一瞬のことで、ガネットはすぐにナターシャから目を逸らすと、瞼を伏せてしまった。

 可愛らしい容姿をした、か弱い雰囲気の女の子だ。きっと身体が小さくなってしまったショックや戸惑いにより、精神的ダメージが大きいのだろう。本当にこの聖女に任せていいのかという不安もあるかもしれない。

 そう考えたナターシャは、ガネットの気持ちを落ち着かせようと、穏やかに微笑んだ。


「大変な目に遭われましたわね。すぐに元の姿に戻して差し上げますので、お待ちくださいませ」


 そう言って立ち上がるナターシャの傍らには、やや心配そうな視線を向けるアリストがいる。


「……な、ナターシャ、で、できそう……?」

「心配ありませんわ、わたくしに解けない呪いはありません。万が一そのようなことがあれば、解けるまでやるまでですわ」


 ナターシャが勇ましい発言をする度に、前世のナタリーが背後にちらつく。

 その堂々たる姿に、思わず見惚れてしまうのは……アリストだけではないかもしれない。

 ナターシャは正面からガネットに向き合うと、そっと両手を持ち上げ、ガネットの頭上に翳した。

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