5-3
「はあぁ……なるほど、そうすれば汚れなどのいらないものだけ吹き飛ばすことができるんですのね! もしや、そのやり方で館内も?」
「う、うん、掃除してる」
「だからどこも綺麗でしたのね」
ホウキで掃いたりするよりも、魔力で汚れを消し飛ばした方が、ずっと綺麗になるだろう。
しかし、ナターシャがいた修道院では、みんな魔力を使わずに家事をしていた。
それは聖女の奉仕精神を育むためでもあったが、もっと重要な理由が他にあった。
聖女の魔力とて無限ではないため、使えば使うほど体力も気力も消耗する。
だから魔力以外でできることは、極力人の手でするのが基本であり、ルールなのだ。
魔力に頼りすぎては、人の暮らしのあるべき姿を損ねてしまう恐れがあるため、無闇に使用することは禁じられていた。
しかし、ここは辺境の地、ティルバイト。世間から隔離されたこの空間では、ある程度魔力を便利使いしても、誰の目にも届かなければ、罰せられることもないのだった。
「わたくしも浄化の力で同じようなことができますわ。なんならその筋の専門ですので……よろしければみなさんの洗濯や部屋の掃除もお任せくださいませ」
「そ、その前に、ナタしゃ……ナターシャに、お、お願いしたいことが……」
誇らしげに宣言するナターシャに、控えめに申し出るアリスト。
一瞬、ナタしゃん呼びが出そうになったが、昨夜のことを思い出して急いで言い直した。
アリストの前置きに、ナターシャはすぐにその先を読み取って答える。
「ガネットさんのことですわね」
アリストがパッと顔を上げると、真剣な面持ちをしたナターシャと目が合った。
このタイミングでアリストがお願いしたいことといえば、ガネットのことしかないだろう。
ナターシャに立派な聖女の力が備わっているなら、ガネットの呪いを解くことができる……そう考えるのが自然な流れなのだから。
「もちろん、呪いを解いて差し上げますわ。昨日は能力を知られたくないばかりに、申し出ることができずごめんなさい、聖女失格ですわね」
ナターシャの心からの謝罪に、アリストは少し驚いた後、ブンブンと激しく首を横に振った。
言葉がなくても、そんなことない! と、懸命に否定してくれる気持ちが伝わるようだ。
やがて動きを止めたアリストは、ナターシャに今一度問いかける。




