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前世に断罪された原因、それを取り除けば、きっと新しい未来が開けるはずだ。
前世の『ナタリー』は『セシル』に陥れられるほど憎まれていた。
ナターシャはその理由がすぐにわかった。
ナタリーは貴族の娘で、女でありながら戦で活躍する女傑のような存在だった。
剣の特訓などを通して、騎士たちと親しくなり、ほとんどの時間を彼らと過ごしていた。
ナタリーの功績は素晴らしく、王を含む多くの男たちに気に入られていたのだ。
貴族令嬢らしく読書にいそしみ、室内で過ごすことが多かったセシルは、そんなナタリーに強い嫉妬を抱いたのだろう。
住まいが近く、同い年の貴族令嬢ということもあり、周りから比較対象にされることが多かったのも、その一つの要因かもしれない。
そして今世では、素質検査の一位二位通過者として出会った二人。
セシリアは自分より期待されているナターシャを妬み、親しいふりをして意地悪を仕掛けてきている。
つまり、生まれ変わってもなお、同じ状況が起ころうとしていたのだ。
このままではまずいと悟ったナターシャは、今世では絶対に目立たないと決めた。
その日から、ナターシャはひたすら出来の悪い聖女見習いを演じた。
幼い頃は優秀だったのに、伸び悩んで期待外れもいいところだと、そう思われるようわざと仕向けた。
そしてその甲斐あって、魔力テストで最低値を叩き出し、祝、聖女不合格となったのだ。
これですべてが上手くいくわけではないだろうが、一番の問題は回避できたはず……とナターシャは思っている。
自分は追放、セシリアは大聖女。これだけ差があれば妬まれはしないだろう。
――くくく……ふふふ……おーっほっほっほ!!
外に声が漏れないよう、ミュートで高笑いするナターシャ。
この笑い方も前世と変わっていない。
ナターシャの前世……ナタリーの二つ名は『豪傑の悪役令嬢』。
前世の貴族婦人たちの間で流行っていた、ライトノベルなる読み物の中に登場する悪役令嬢。
そのキャラクターにナタリーが似ているということで、そんな通り名がつけられてしまった。
ナタリー自身は本に興味がなかったため、ライトノベルも知らなければ、なぜ自分がそんなふうに呼ばれているかもわからなかったが。
ナタリーの外見や所作は、確かに悪役令嬢のそれに等しかったので、『豪傑の悪役令嬢』という呼び名がものすごくマッチしていた。




