5-2
「ふ、服……き、昨日と、違うね……に、荷物、見つかったの?」
アリストの指摘に、ナターシャは面食らって目を丸くした。
アリストの言う通り、ナターシャが今身につけているのは、昨日ここに来る時に着てきた聖女服ではなく、着替え用に荷物に入れていたそれだ。
しかし、色もデザインもまったく同じなのに、なぜアリストがそんなことを言えたのか、ナターシャは不思議でならなかった。
「確かにこれは昨日着てきたものとは別の服ですわ。まったく同じなのに、よく気がつかれましたわね」
「も、模様の位置が、す、少し違うから」
えええ……と心の中で声を漏らし、若干引くナターシャ。
衣類はみんな職人の手作りなので、そりゃあ多少の違いは生じるだろうが。
そんなミリ単位の誤差に気づく細かさと、そこまで自分の服をガン見していたのかと思うとちょっと怖い。
しかし、そんな些細な変化まで見抜くとは、アリストに力を隠そうなど、最初から無理難題だったのだと、ナターシャは改めて感じた。
「視力がいいんですわね……実は、荷物を落としたと言ったのは嘘なのです。本当は運ぶのが重いので、魔法で小さくしてポケットに入れていたのですが……戻すタイミングを見失ってしまいまして」
ナターシャが荷物について説明すると、アリストは急にカクッと顔の角度を落とした。
見開いた銀灰の瞳は焦点が定まっておらず、肌の色は真っ青に染まっている。
「そ、そっか、な、なら、ボクのローブ、い、いらなかったね……よ、よ、余計なことして……」
腹でも壊したのかと心配したナターシャだったが、原因が自分にあると知ると、急いでフォローに入る。
「全然、そんなことありませんわ! 着心地もよかったですし、なによりアリストの気持ちが嬉しかったので!」
「ほ、本当……?」
「ええ、もちろんですわ!」
ナターシャが全力で肯定すると、アリストの顔色は徐々に戻り、安堵の表情に変わった。
危ない、一体どこに地雷があるかわかりやしない。そう思ったナターシャは、素早く別の話題に切り替える。
「お洗濯してお返ししようと思うのですが、ここのみなさんは洗濯はどうなさっているんですの?」
「み、みんな交代でしてるよ、ま、魔術で」
「魔術で、お洗濯を……?」
「よ、汚れとか、ほ、ホコリとかに、限定して、攻撃するんだ」
アリストの答えにナターシャは感心の声を上げる。
浄化を得意とする聖女が、汚れを消せるのは当然だが、魔術師がそんなことをしているのは、聞いたことがない。
黒魔法を応用すれば、いろんなことができるようだ。やり方は違っても、白魔法と同じような効果を得ることも。




