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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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4-10

「それは、マッドボーン伯爵が?」

「う、うん」


 ここを守っているのは、アリストの魔力だとわかる。となれば、不思議な植物や地面の色合いは、彼の魔力の影響かと思われた。


「毎日術をかけられているんですの?」

「う、ううん……な、何年か前、一度、か、かけたきり、だけど、う、薄れてないから」

 

 聖女のバリアーでも長い時間保ち続けることは大変だ。大聖女の力であっても、時の経過とともに薄れるため、定期的な魔力の補充が必要とされる。

 それを黒魔術師でありながら、白魔法のように応用した上、継続と保持を実現するとは。本家の聖女かたなしの実力である。

 さすがは最強と謳われるロッドベリルの魔術団長。

 アリストの能力は……正直大聖女である自分にも計り知れないと、ナターシャは思った。

 それにしても、嵐や猛暑の日でも、ここは平穏を保っているなんて、本当に浮世離れした不思議な場所だ。


「天候に振り回されなくていいなんて、素敵ですわね」

「き、君も、バ、バリアーを使えば、できるんじゃ」


 アリストの言葉に、ナターシャはいささか疑問を感じた。

 なぜ『下級聖女』としてここに来ている自分に、そんなことを言うのだろうと。


「まともな聖女であれば一定時間、狭い範囲を守ることは可能でしょうが……ティルバイト一帯を包むほどの力は、大聖女でもない限り不可能でしょう……残念ながら、わたくしのような下級聖女は論外ですわ」


 聖女について、よく理解していないのだろうと考えたナターシャは、アリストにわかるように説明した。

 しかし、アリストはそんなこと重々承知していた。

 その上で、ナターシャがバリアーを使えると思った理由は……。


「……ねえ」

「はい?」

「ど、どうして、嘘をついてるの?」


 アリストは一体、なにを言っているのか。

 ナターシャがその理由を考査するより先に、アリストが続いて薄い唇を動かす。


「ほ、ほんとは、す、すごい力があるのに」


 凍りつくナターシャの瞳に、アリストの不思議そうな顔が映る。

 あまりに突拍子のない、予想外すぎる台詞に、ナターシャはすぐに対応することができなかった。

 ――今……わたくしにすごい力があると……そう言ったんですの……? なぜ? どうして? いつ、どこで、そんな結論に?? いや、そんなことはこの際どうでもいいですわ。わたくしの能力に気づいているとしても、きっとまだ疑いの域は出ていないはず、ここはしらをきって、きってきって、きり倒すしかありませんわ。

 僅か数秒の間でそれだけのことを脳内に巡らせたナターシャは、極めて自然な笑顔に切り替えた。


「嫌ですわ、マッドボーン伯爵ったら、そんなご冗談を……本当にわたくしにすごい力があるのなら、今頃大聖女に任命されていますわよ」

「……す、スフェンの目、な、治ってる」


 アリストのさらなる追撃に、ナターシャは冷や汗が滲み出す。

 たった一頭、野生の魔獣のケガを治したところで、誰に認識されることもないだろうと、ナターシャは考えていた。

 まさか、ロッドベリルの団長が、こんなふうに魔獣たちとの憩いの場を設けているなんて、知らなかったのだから。

 決まった日時に魔獣たちと戯れているアリスト、毎日同じ魔獣が来るとは限らないが、スフェンのことは名前をつけるくらい親しいのだろう。

 となれば、スフェンの傷がないことにも当然気づく。長年の傷が綺麗さっぱり消えたことを考えると、聖女の回復魔法のおかげと思うのが自然かもしれない。

 恐らく、アリストはそこまで考えた末、自分の正体に気づき始めたのだと、ナターシャは思った。

 しかし、ナターシャの読みは外れていた。実はアリストはそこまで深く考えておらず、もっと単純な理由で真実に辿り着いていたのだ。

 そうとは知らないナターシャは、なんとか誤魔化して、この場を切り抜けようと足掻く。

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