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「こ、ここは、ほ、本来の、気候に、あ、あんまり左右、されないから」
「本来の気候……では、雨が降ったりしないんですの? 太陽が暑いくらい照りつけたりだとか……」
「め、滅多に、ないよ、い、いつも曇りとか、霧とか、そんな感じ……き、気温も、安定してる」
なんと、ティルバイトは、本当に外部とは違う環境になっていた。
そう言われてみれば、気温は王都よりもやや低く感じる。王都も今は春なので、あまり違いがわからなかったが。
ナターシャはそこまで考えて、ふとある疑問にぶつかった。
雨や日光には、大切な役割があるというのに、それが届かないとなると……。
魔術団のメンバーは人間なので、ティルバイトを出て買い物に行くなりして、食料を調達することができるだろう。
しかし、ここに居着いた魔獣はどうしているのか。わざわざお腹が空いた時にだけ別の場所に移動して、食事を済ませた後また戻ってくるのだろうか。
野生の獣にとって、食べることは最優先事項。いくら魔力に惹き寄せられたからといって、食料がないところに永住するのは不自然な気がした。
「ですが、それでは、食物が育たないのでは……」
「ま、魔獣は、食べ物がなくても、ま、魔力を、ほ、補充すれば、生きていけるから」
アリストの回答により、ナターシャの謎は綺麗に解けた。
ここの特異な植物たちは実を成さず、葉は美しいが決して美味しそうには見えなかった。
だから生き物が根づくのは難しいだろうと、ナターシャは考えていたが、魔力も糧にできるならば話は別だ。
むしろ魔獣たちにとって、常日頃から魔力が漂っているここは、楽園といっても過言ではないかもしれない。
魔獣の本には種類が書いてあったくらいで、性質については詳しく触れられていなかった。そのため、事実を知ったナターシャは、目から鱗だった。
「まあ……それは、存じ上げませんでしたわ。ならば魔獣たちが集まってくるはずですわね」
ナターシャは感心しながら言うと、次にこのティルバイト一帯を包む魔力の源が気になった。
「しかし、どのようにして、魔力が満ちた状態を保っておられるんですの?」
「こ、細かい魔力を、外に向けて、は、放ってる感じ」
「ああ、なるほど、黒魔法を応用して、バリアーのようになさっているのですね」
皆まで言わずとも理解してくれるナターシャに、アリストはホッとする気持ちでコクリと頷く。
黒魔法は攻撃系なので、白魔法のような防御系の技は本来ない。
だが、攻撃の技を応用して、防御の技に転じることはできる。
外部に向けて微量の魔力を放ち続けることで、侵入を防ぐバリアーと同じ役割を果たす。まさに攻撃は最大の防御と言えるやり方だ。
応用技なので、もちろん高い能力と技術が必要になるが……。




