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「だ、大丈夫ですか!?」
驚いたナターシャが、隣にいるアリストに飛びつくようにしゃがみ込む。
すると、魔獣たちの隙間からニュッと手が出てきたかと思うと、のそのそとアリストの頭も見えてきた。
魔獣たちに抱きつかれた勢いで、フードが脱げている。
ナターシャは目の前に晒された白髪に釘付けになった。
アリストはやっとのことで魔獣たちから這い出すと、壁を背もたれに足を伸ばして座る。
すると、すかさずデビルラビットがアリストの膝に乗り、他の魔獣たちは彼を囲むように伏せたり寝転んだりと、まったりし始めた。
どうやらこれが、アリストと魔獣たちの関わり方のようである。
「へ、平気、い、いつものこと……」
やけに視線を感じたアリストは、言葉を切ってナターシャを見る。
すると彼女のまっすぐな瞳と同時に、なにか足りないことに気づいた。
焦ったアリストは、脱げてしまったフードを、両手でいそいそと被り直す。
せっかく露わになったそれを隠すアリストに、ナターシャは眉を下げた。
「いつもフードを被っておられるんですの?」
フードについて触れられたアリストは、肩をビクッとして、瞳をウロウロさせる。
「……こ、この方が、お、落ち着くから」
フードを被っていないと、なんだか頭がスースーして、変な感じがする。
そう思うくらい、アリストにとっては、フードを被っていることが当たり前なのだ。
その気持ちはナターシャにも伝わった。しかし、ナターシャはあんなに美しいものを隠すだなんて、もったいない気がしてならなかった。
「それは残念ですわ、もっとよく見ていたかったので」
少し寂しげに微笑むナターシャの声が、アリストの耳に届く。
――も、もっと、よく見たいって、な、なんでだろう……。
そんなことを初めて言われたアリストは、戸惑ってフードの縁を持つ手に力を込めた。
ナターシャがなぜ、そんなことを言ったか、アリストにはわからない。
だが、少なくとも、ナターシャが人の容姿をバカにするとは思えなかった。
なによりも、ナターシャが見たいと言うなら、見せてあげたいと、アリストはなぜかそう思ったのだ。
黙り込んでしまったアリストに、機嫌を損ねたかと勘違いしたナターシャは、謝罪しようと考える。
そしてナターシャが口を開こうとした時だった、アリストがフードを掴んだ手を後ろに動かしたのは。
アリストの頭のてっぺんから、後頭部にかけて滑り落ちる漆黒の被り物。
刹那のうちにふわりと溢れ出す柔らかな髪は、真夜中を照らす銀光を浴びてキラキラと輝いていた。
ナターシャは目を細め、ほうっ……と息を漏らす。




