4-6
なぜナターシャがこんなことになってしまったかというと、今、彼女の目の前には、世にも珍しい魔獣たちが集っていたからだ。
レインボーの一角を持ったミラクルガゼルに、コウモリのような羽を生やしたデビルウサギ、金色の鬣のユニコーンに、ピンク色のトゥインクルゴリラまで、捕獲レベルS級の魔獣たちばかりだ。
S級魔獣は数が少ない上、普通の獣と比べて知能も高い。だからなかなか人間には捕まらず、お目にかかれる機会も滅多にないはずなのに。
「すっ、すすすごいですわっ! なぜこのように希少な魔獣たちばかり……!?」
「き、希少種の、ま、魔獣は、魔力が強い、から……せ、戦争に利用、されるんだ」
興奮のあまり鼻息を荒くしていたナターシャは、アリストの言葉にハッとした。
魔獣を捕獲して、力や魔術などで従わせ、戦争の道具として利用する。そんなことが、当たり前のように行われていた時代があった。
近代化が進むにつれて、戦争をする国も少なくなり、それに伴い、魔獣の密猟や悪用も減った。
しかし、まったくなくなったわけではない。
ソリスティリア王国は今現在平和であるが、治安の悪い他国から魔獣を狙う密猟者がやって来ることもある。
しかし、以前パトリックが言っていたように、ここティルバイトは魔力を持たない生き物は侵入できない。
つまり、魔獣が密猟者の手にかかかるのを防げるということだ。
そんな考えに至ったナターシャは、ある結論を導き出した。
「もしや、希少な魔獣たちを、保護しておられるのですか?」
ナターシャの問いに、アリストはフードを目深に被って答える。
「……ま、魔獣たちは、ま、魔力に惹かれて、あ、集まって、くるから……そ、そのまま一緒に、く、暮らしてるだけ……ここにいたら、あ、安全だから」
座っている上フードを被って俯いているので、ナターシャからアリストの表情は見て取れなかった。
しかし、ナターシャはアリストが、少し照れているのを感じた。
さっき魔獣の世話をしているのかと聞いた時の返事といい、アリストは恩着せがましく言うのが嫌いなようだ。
ナターシャは温かな気持ちで改めて目の前の景色を見た。
確かに、世界中を探しても、ここまで魔力に満ちた場所はなかなかないだろう。
希少な魔獣たちは本能的にティルバイトに惹かれ、そのまま定住し、ロッドベリル魔術団の人間たちと共存する流れになっているようだ。
「魔獣たちを、大切にしておられるのですね」
「……ど、動物は、や、優しくしてあげた分、や、優しく、してくれるから……」
まるで人間は優しくないとでも言いたげな、その台詞が引っかかったナターシャは、もう一度アリストを振り向く。
と、今まさに、アリストが魔獣に襲われ……抱きつかれるところだった。
何頭もの魔獣に一度に上から乗られたアリストは、ムギュッと地面に潰されるように体勢を崩した。




