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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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4-5

 するとピクッと反応を示したスフェーンタイガーが、パチッと金の瞳を開く。

 特徴的な傷がないので、ナターシャが助けたスフェーンタイガーなのか、他のスフェーンタイガーなのかわからない。

 しかし、スフェーンタイガーの次の行動で、ナターシャは確信を持ってしまう。

 スフェーンタイガーはムクッと起き上がると、アリストの向こう側に立つナターシャを見るなり歩み寄った。

 そしてナターシャの周りをグルグル回りながら、彼女に身体を擦りつけてきたのだ。

 魔獣といえども虎なので、性質は猫と似ている。スフェーンタイガーのナターシャへの接し方は、猫が甘える時に取る行動と同じだった。

 その様子を見たアリストは、銀灰の瞳を丸くした。


「す、スフェンが、懐いてる……め、珍しい……」

「そ、それは光栄ですわね、きっと今日は機嫌がいいんですわ、おほほほ」


 口元に手の甲を添え、上品に笑ってみせるナターシャ。その間もスフェンはナターシャに大きな身体をすりすりしている。

 警戒心の強い魔獣が、なんの理由もなくこんなに懐くはずがない。この個体は間違いなく、ナターシャが助けたスフェーンタイガーだろう。

 とはいえ、これで正体がバレるわけではないので、ナターシャが焦る必要もない。

 だから嬉しそうにくっついてくるスフェンを、可愛がる余裕もあった。

 サラサラした黄緑色の毛並みが頬をくすぐると、ナターシャは小さく笑ってスフェンの頭を撫でる。


「それにしても、本当に美しいですわね……スフェンという名前は、スフェーンタイガーから取られましたの?」

「うん……く、詳しいね」

「修道院で生き物の本を読んでいた時、魔獣についても書かれていたので。ですが、本当にそんな生き物がこの世に存在するのか、狭い世界しか知らなかったわたくしには、嘘のように感じておりました。……今、こうして実際に目にしてみて、驚き……いえ、感動に近い気持ちでいますわ」


 ナターシャが魔獣に好感を持っているのを知ると、アリストは嬉しくなって顔を上げた。


「……ま、魔獣、も、もっと、見てみたい?」

「そうですわね、叶うならば」

「よ、よかった」

「え?」

「今から、も、もっと、来るよ」


 アリストがそう言うのが早いか否か、銀の森の向こうからなにかがやって来る気配。

 ガサガサと、茂る葉を掻き分けるような音と、いくつもの足音が重なり合って聞こえる。

 ナターシャがそちらを振り向いた時には、すでに銀の樹木を抜けてきた魔獣たちの姿があった。

 ナターシャは目も口も丸く開き、しばらく言葉を失った後、次第にふるふると身体を戦慄かせた。そして……。


「ッハアアアアアーーーー!!!!」


 ティルバイト中に響き渡りそうな声量がナターシャの口から放たれた。

 恐怖ゆえの悲鳴ではない、歓喜ゆえの雄叫びだ。

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