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なぜ、ナターシャがこんな行動を起こしているかというと、もちろんガネットを探すためだ。
ガネットはいろんなところを探索していると団員から聞いた。晩餐会にも参加しなかったので、ナターシャと遭遇した後も、館に戻らず違う場所に行った可能性が高い。
となれば、方法は一つ。
ティルバイト内をひたすらに探すしかない。
広さすら把握できていないこの地を、どこまで確認できるかわからないが、時間が許す限りやろうとナターシャは決めた。
幸い、仮眠を取っていたため、まだ全然眠くない。むしろバキバキに覚醒しているくらいだ。
しかも、ナターシャの部屋は館の角にあるため、出入り口の扉がすぐ近くにある。
バスルームも近いし、ずいぶんいい場所を与えてくれたものだと思いつつ、ナターシャは館の扉を押し開いた。
その瞬間、ナターシャは思考を止めて目を見開いた。
眼前に広がる景色に、本来の目的が吹き飛ぶ。
星や月も見えない、漆黒の夜空の下、清廉な光を放つ銀色の葉をつけた樹木たち。
そしてそれを支える紫の土は、昼間の毒々しさが嘘のように、アメジストのように輝いていた。
辺りが暗いことにより、さらに煌めきが増したようだ。日が高い時間帯とはまた違った、特別に美しい表情を見せる風景に、ナターシャの目は釘付けになってしまった。
――こんな世界が、この世にあっただなんて……。
金や赤のような派手さはないが、心が落ち着くような幻想的な麗しさだ。まるで夢でも見ているような心地になる。
もっとそばで見てみたいと思ったナターシャは、アメジストのような地面を歩き、木々に近づこうとした。
――その時。
「あ」
どこからか、少し間の抜けたような声が聞こえた。
ナターシャは幻想世界に浸ってぼんやりしたまま、なんとなくゆっくりとそちらを振り向く。
すると、遠巻きにカチッと目が合う。
館の裏側にあたる壁を背に、地面に三角座りをした、フードを被った白い肌の――。
それが誰なのか理解した刹那、ナターシャは一気に現実世界に引き戻された。
――ま、ま、ま、まずいですわ……!!
本来の目的を思い出したナターシャは、悲鳴を上げそうになるのを耐えながら、額に汗を滲ませ顔を引き攣らせた。
まさかこんな時間に、こんな場所で、一番会いたくない相手に遭遇してしまうなんて。
なぜ一番会いたくないかというと、そりゃあアリストがここで最も偉い人物だからだ。
ティルバイトの領地の主であり、ロッドベリル魔術団長、権力者である彼に能力がバレたら、王に連絡が行くのも早いだろう。




