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外観と同じく、純白で質素な内装。その廊下を歩いていくと、ナターシャは自分に与えられている部屋の前で立ち止まった。
そして焦茶色の木でできたドアを押し開くと、中に足を踏み入れ、後ろ手にドアを閉めた。
すぐ正面に見える小窓、その手前にあるベッドと机と椅子のセット。
どれも距離が近く、ギュッと小さく纏まった空間は、聖女の清貧な暮らしを物語っている。
それらを前に、ナターシャは俯いた顔を両手で覆った。
そして次第にカタカタと震え始める。
彼女は思う。
盛大に魔力のテストに落ちて、王都追放を命じられるなんて……
そんな、そんなこと……
いや……いや…………
ぃやったああああああああーーーーーーー!!!
握りしめた両拳を渾身の力で振り上げ、ナターシャは吠えた。
あくまで心の中で。静かで壁の薄い修道院、いくら個室にいても、叫んだら外に聞こえてしまう。
いや、しかし、本当に大声を張り上げてしまいたくなるほど、ナターシャは歓喜に打ち震えていた。
声にできない代わりに、ドスンドスンとジャンプをして、その場をクルクル駆け回ったくらいだ。
そう、ナターシャはまったく絶望などしていなかった。むしろ、その逆である。
なぜなら、現在の状況を作り出したのは、ナターシャ自身なのだから。
――やった……ついにやりましたわ、最大の難関を突破しましたわよ……!!
金色のさらりとしたロングヘアー、透き通るような肌にすらっとした細い体型。そして……過去を思わせるアメジストのような紫の瞳。
聖女らしい見た目とは裏腹に、彼女の口調はまるで悪役令嬢のようである。
それもそのはず。彼女は前世の記憶を持って、今の自分……『ナターシャ』に生まれ変わったのだから。
遡ること十四年前……現在十九歳のナターシャは、当時五歳だった。
その時、聖女の素質検査を受けたナターシャは、かなりいい結果を出した。
後から受ける魔力テストは実技が主だが、素質検査は、その時の大聖女や王宮専属の魔術師などが、手に直接触れることで、生まれ持った資質を感じ取る。
そのため、ナターシャも例に漏れず、検査のために手を差し出したのだが。
それを取った相手が、驚くほどの高い素質を持っていると告げたのだ。
そうしてナターシャは秘めた素質を磨くべく、聖女見習いとして修道院で暮らすことになった。
家族と離れるのは特に寂しくはなかった。
特に不仲でもなかったが、まだ五歳の娘が出ていくのを、喜んで見送る両親に愛着が湧かなかった。
国民の怪我や病を癒し、時にはシールドも張る。国の平穏を守るため、天災や他国の侵略を防ぐためにも、聖女の存在は必要不可欠だった。
そのため、立派な聖女になった暁には、かなりの褒賞が与えられる。
修道院に入るだけでも、将来の期待を込めて、それ相応の対価が支払われる。
だから幼い我が子を修道院に入れて、聖女にしたいと願う親も少なくないのだ。
修道院入りした当の聖女たちは、贅沢にはほど遠い暮らしをしているというのに。




