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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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2-10

 一団員を叩いただけでも問題だろう。それなのに、まさかの団長に一撃をくらわせてしまった。

 ここで生きていくためには、一番偉い人物と円滑な関係を築く必要があったのに……。

 ――さようなら、わたくしの第二の人生……。

 もはや抵抗しようがないナターシャは、遠くを眺めながら、第三の人生あるかしら……? とぼんやり考えていた。

 すると、黒髪の青年が徐に立ち上がり、ナターシャの前に向き直る。


「……あなたは、王都から派遣されてきた聖女様、ですよね?」


 灰になりかけていたナターシャは、声をかけられハッとすると、なんとか形状を保つ。


「あ、は、はいぃ、そ、そうでございます……ナターシャ・リアン・ブランビスク、歳は十九、スリーサイズは上から八十六、五十八、八十三……」

「そこまで言わなくてけっこうです、必要なことはすでに聞いてありますので」


 焦って不要な情報まで口走るナターシャを、彼はピシャリとした口調で制した。


「し、失礼いたしました」

「私はパトリック・リヴ・ノーマン、ロッドベリル魔術団の副団長で、アリスト様の片腕です」

「ふ、副団長様……どうぞ、改めてよろしくお願いいたしま……」

「別によろしくしなくてけっこうですよ」


 パトリックはナターシャの言葉を遮ると、ハンッと鼻で笑い、冷たい目で彼女を見下ろした。


「ティルバイト専属の聖女になるなんて、ろくなもんじゃないでしょう? 無能でいらない聖女を送ってきたことはわかっていますから。国のルールに合わせた形だけの配置、そもそも私たちには聖女など不要なので、どうぞご自由になさってください。ああ……先ほどここでなにがあったのか……その件については、後で団長から話を聞いておきますからね」


 ペラペラペラペラと、よく口が回る。

 口下手のアリストと足して二で割れば、ちょうどいいのではと思うくらいだ。

 しかしパトリックの言っていることは的を得ている。だからこそナターシャはなにも返す言葉がなかった。


「……かしこまりました」

「では、部屋に案内します、ついてきてください」


 パトリックはそう言うと、ナターシャを横切ってさっさと部屋を出ていってしまう。

 ナターシャは恐怖のあまりアリストを見ることができず、後ろ髪を引かれながらもパトリックの後を追った。

 どんな魔物や化け物よりも、今はアリストの反応が恐ろしい。

 ずいぶんと静かだっただけに、なにを考えているかわからないのが不気味だ。一体、後でどんな制裁を受けるのだろう。

 そんなことを考えながら、ナターシャはパトリックの後ろを歩く。

 まさか、自分の行いが、意外な方向に作用しているとは知らず……。

 

「な……ナター、シャ……」

 

 一人残された書庫で、アリストは赤くなった自身の頬に触れ、彼女の名を紡いだ。

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