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転生悪役令嬢とヤンデレ魔術師のゆるっとやり直し生活(希望)〜今世は大聖女ですが気楽に生きてみせますわ!〜  作者: 碧野葉菜


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2-9

 ――ま、まずいですわ……わたくしの中のナタリーが暴走して……。

 今まで我慢に我慢を重ねて、大人しい聖女キャラを演じてきたというのに、ここに来てぶちかましてしまったナターシャは慌てふためいた。

 彼女がなんと言い訳しようか考えていると、本棚に倒れていた彼が俯いていた顔を少し起こす。

 すると被っていたフードが頭から滑り落ち、そこに現れた姿にナターシャは目を見開いた。

 パールのような淡い煌めきを帯びたふわりとした白髪はくはつに、銀灰の優しげな瞳、高い鼻と薄い唇。

 陶器のような肌に美しく整ったパーツに、ナターシャは今の状況を忘れて思わず見惚れた。

 ――まあ……これはこれは……。

 その時だった、どこからか走ってくる足音が聞こえてくる。

 それは瞬く間に接近し、部屋の中に飛び込んだ。


「どうしたんですかっ!?」


 ナターシャが振り向くと、出入り口の前には白髪の彼と同じ、漆黒のローブを纏った男性が立っていた。

 白髪の青年と同じくらいの背丈をした彼は、トパーズのようなオレンジ色の瞳を持っており、フードを被っていないため、さらりとした黒髪がよく見えた。

 ナターシャのクソデカボイスを聞いて駆けつけてきたのだろう、彼は正面に見える人物に気づくと、急いで駆け寄って支えるように跪く。

 そして次の瞬間、彼が口にした言葉に、ナターシャは凍りつく。


「大丈夫ですか、団長っ!」


 ――――?

 彼を視線で追ったナターシャは、自身の耳を疑った。

 いやいや、まさか、そんなバカなと、思考が拒絶反応を示す。


「頬が赤くなっていますよ、一体なにがあったんですか、団長」


 しかし、ナターシャがいくら否定しようと、現実は変わらない。

 再度耳に入ってきた言葉に、ナターシャの脂汗が止まらない。

 ナターシャはゴクリと生唾を飲み込むと、勇気を持って口を開く。


「…………あ、あの……そちらの、方は……?」


 さっきまでの威勢はどこに行ったのか、蚊の鳴くような声で問いかけるナターシャ。

 すると黒髪の青年が振り向き、切れ長の瞳にナターシャを映した。


「ロッドベリル魔術団の長、大魔術師のアリスト・ノワール・マッドボーン様です」


 パキッ……ガラガラガラガラ……ズシャーン

 決定的な言葉を告げられたナターシャは、己の計画が跡形もなく崩れてゆくのを感じた。

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