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魔力のテストが終わると、会場になっていた王宮の広間に集まっていた者たちが散っていく。
王族は王宮にある各自の部屋に戻り、貴族は領地へ、聖女は修道院へと帰っていくのだ。
そのうちの聖女に分類されるナターシャも、みんなと同じように馬車に乗る。
王宮を出発して、緩やかな坂を下り、平坦な道をしばらく行くと、純白の建物が見えてくる。
三つ並んだ三角屋根、一番背の高い中央を軸に、もう二つが左右にくっついている。
先ほどの王宮と比べれば、十分の一ほどの面積だろうか、こぢんまりとした飾り気のないそれは教会のように見える。
ここがナターシャ含む、聖女たちが暮らしている修道院だった。
正しくは聖女見習い……であるが。
ここ、ソリスティリア王国では、女子は五歳を迎えた時に素質検査を受ける。
生まれ持った魔力がどれほどあるか調べることにより、今後立派な聖女になれる可能性を秘めているか判断するのだ。
その際、一定基準を満たした女子には、修道院に入るよう通達が来る。
この世界において修道院というのは、素質がある女子だけを集めた専用の学舎であり、いわば聖女育成寮であった。
先頭の馬車からセシリアが降り、他の聖女たちもそれに続く。
みんな襟元や袖口に金の刺繍が入った、白いワンピースを着ている。これが聖女見習いの決まった装いであった。
馬車を最後に降りたナターシャは、俯いた状態で修道院に入ると、黙り込んだまま静かに足を進める。
「おめでとうございます、セシリア様!」
「さすがセシリア様ですわ、王国を代表する大聖女に任命されるだなんて!」
「セシリア様が大聖女になられたら、ソリスティリアは安泰ですね!」
修道院の広間でセシリアに群がり、褒め称える他の聖女たち。
魔力テストの結果次第で、聖女になるか、なれないかが決まる。
一口に聖女と言っても、能力の差によって配置先や待遇も違ってくる。
そんな中、セシリアが任命されたのは、ソリスティリア王国、国王直属の聖女――『大聖女』。
聖女たちの頂点と呼ばれる、この『大聖女』という大役を担ったのだから、周りが騒ぎ立てるのも無理はなかった。
しかし、ナターシャはセシリアに見向きもせず、祝福モードのみんなを横切ると、自分の部屋に向かう。
「なぁに、あの態度、セシリア様に祝いの言葉も贈らないだなんて」
「きっとセシリア様ばかり讃えられるものだから、ひがんでいるのよ」
「まあ、みなさん、そんなことを言わないで。今、ナターシャは深く傷ついているの、そっとしてさしあげて」
「セシリア様は本当にお優しいわ」
「あんなナターシャのことを、親友だなんてお呼びになっているものね」
そんな言葉を背に受けながら、ナターシャは二階に続く階段を上る。




