表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/141

8-12

 ナターシャが追放者であることは、王侯貴族みんなに周知の事実。その中で知らないのはマッドボーン伯爵率いるロッドベリルのみ。

 つまり、アリストを仲間はずれにした、集団いじめというわけだ。

 ――なんて下らない……愚かな貴族ども、この宮殿ごと沈めて差し上げたいわ。

 上流貴族たちはアリストのサンタウォーリアでの活躍を知っているはずだが、その上でまだ騎士が一番だとかバカげた考えの元、魔術師を差別して無礼な態度を取っているのか。

 古すぎるカチカチ頭に凝り固まった固定概念、何年経っても更新されないその分厚いフィルターのせいで、美しいものさえ醜悪な姿に変わって見えてしまう。

 そんな彼らを見ていると、ナターシャはもう二度と貴族にだけは生まれ変わりたくないと思った。

 そして同時に、こんなひどい扱いを受けても、怒りに囚われないアリストに敬意を払う。

 アリストの力を持ってすれば、こんな奴ら一瞬にして消し去ることができるだろうに。


「アリスト、大丈夫ですか? さあ、こちらに」


 ナターシャはアリストの手を引くと、広い会場の隅にあたる、窓のそばに連れていった。

 ナターシャが見上げたアリストの顔は青白く、今にも泣き出しそうである。


「……ご、ごめん、な、ナターシャ……」


 アリストはどうにか声を絞り出すと、ナターシャに謝罪をした。


「なにを謝るんですの?」

「ぼ、ボクのせいで、き、君まで、わ、悪く言われてるんじゃ……」


 動揺していてナターシャに対する言葉は、ハッキリ聞き取れなかった。

 しかし、なにか悪口を言っていることは感じたので、アリストは自分と一緒にいるせいで、ナターシャまでとばっちりを受けたのではと申し訳なくなったのだ。

 が、アリストの心配をよそに、ナターシャはケロッとした顔で答える。


「ああ、そういったことならご心配なく。わたくし、昔から人の言うのことは気にならないんですの。言いたい奴には言わせておけばいいんですわ。そもそも全員に理解されるだなんて思っていませんし、数は重要ではありません、大切な人にだけわかっていただければ幸せですもの」


 歯切れのいいナターシャの言葉は、アリストの頭をスッキリさせてくれる。

 ――そ、そうだ……ぼ、ボクは、あの人たちが好きじゃない……だ、だったら、そんな人たちに、な、なにを言われたって、平気なはずだ。

 重要なのは、自分が大切な人に、大切にされているか、ということ。

 アリストにとって、ナターシャは大切な人だ。そのナターシャが、自分を気遣って元気づけてくれる。

 じゃあ、それで十分じゃないかと、むしろその他に望むことなんてないんじゃないかと、アリストは前向きに考え始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ