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8-9

 もうじき式典が始まるのだろう。アリストの出かける支度に時間がかかり、けっこうギリギリになってしまった。転移魔術がなければ確実に遅刻だった。

 ナターシャはアリストの手を取りながら、真っ直ぐに王宮に向けて進んでゆく。

 すると、やがて正面玄関の左右脇に立った二人の男性が、前から歩いてくるナターシャたちに気づいた。

 白地に金の刺繍が入った騎士服を着た彼らは、ミカエリアス聖騎士団の団員だ。式典は大勢の人間が参加するので、護衛にあたっているのだろう。

 しかし、その二人のナターシャを見る目といったら、とても護衛騎士とは思えない。一人は目を見開いて喉を鳴らし、もう一人はだらしなく鼻の下を伸ばしていた。

 ナターシャが正面玄関に辿り着くと、彼らはようやく務めを思い出したのか、ハッとしてナターシャに声をかける。


「あ……み、見ない顔だな、名を名乗れ」


 締まりのない口調で尋ねてくる騎士に、ナターシャはアリストの上着のポケットから招待状を取り出して答える。


「こちら、アリスト・ノワール・マッドボーン伯爵ですわ。そして、わたくしはその付き添い……ナターシャ・リアン・ブランビスクでございます」


 その名を聞いた騎士たちは、驚きと怪訝が混じった顔で互いに目を合わせた。

 それから片方がナターシャの差し出した招待状を受け取ると、白い封筒に入った中身を確認する。

 そして、式典の招待状に間違いないとわかると、それをナターシャに返してから、静かに後退し、扉を開いた。

 その間、アリストはナターシャをじっと見たままだ。

 ナターシャに言われた「黙ってわたくしのことだけ見ていて」に忠実に従っている。いや、さすがに見すぎだと思うが。

 そのおかげで護衛騎士の前でも、背筋を伸ばして震えることなく歩けているので、結果オーライだろう。

 こうして最初の難関である『入場』を済ませた二人を、護衛騎士たちは後ろから見送り、そして呟く。

 

「ナターシャってのはあんな美女だったか」

「あれで追放者でなけりゃあなぁ……」


 そんな男たちの台詞を背に、ナターシャはアリストとともに、王宮内に足を踏み入れる。

 白地が見えなくなるほど金色の模様や装飾で彩られた宮中は、千人は悠に収容できるであろう、広大な面積を誇っている。

 天井から多くのシャンデリアがぶら下がっており、等間隔に並んだ窓の上部には天使や神をイメージした絵が細やかに彫り込まれていた。

 そんな豪華絢爛な宮中、普段はなにもないはずの広間には、今はいくつものテーブルがランダムに置かれていて、豪華な食事が運ばれている。

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