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7-8

 セシルにとってナタリーは、親同士の交流が深く、年齢も性別も同じ、無視することができなかった相手。

 それでセシルの方が身分が上ならよかったが、セシルは侯爵令嬢だったため、ナタリーより格下であった。

 公爵令嬢でありながら女騎士として名を上げ、騎士である男たちから多大な人気を誇ったナタリーが、セシルは憎くて憎くて仕方がなかった。

 だからいつか必ず消してやろうと心に決めて、親友のふりをしてやってきたのだった。

 そして見事、セシルは目的を達成した。

 修道院でナタリー……ナターシャと再会した時に、前世の記憶が蘇ったセシル……セシリアは、早速ナターシャに目をつけ、監視するために親友の顔でそばにいた。

 素質検査で最高値を記録していたから警戒していたが、その後はとんだ肩透かし。聖女の才能など全然ないポンコツだった。

 それがわかったセシリアは、こんな奴は憎む価値もなければ消す必要もないと思い、ただのストレス解消の下僕としてナターシャを見ていた。

 ナターシャに前世の記憶があるのかないのか知らないが、そんなことはどうでもいい。自分より不幸なら文句はないのだから。


「そう、ナターシャが……」


 前世でのナタリーとのやり取りを思い出しながら、セシリアはポツリと彼女の今の名を呟いた。

 そしてジオバールの胸をやんわり押して抱擁から解放されると、憂いを帯びた表情で話す。


「かわいそうに、ナターシャったら、追放された上、そんな狂人の世話をさせられているだなんて……きっと式典に来ても、恥ずかしい思いをするだけでしょうに」

「確かにそうだな、二人して浮くに違いない、場違いもいいところだからな」

「ああ……なんて憐れなナターシャ、できることなら私が変わってあげたい……」


 両手で顔を覆って憐れみの姿勢を見せるセシリア。しかし、その手に隠れた口元は、耐え難い笑いに震えていた。


「セシリアは優しいな、あんな出来損ないをいつも庇ってやって」

「当たり前よ、だってナターシャは、私の大切な親友なんだもの……」


 セシリアはそう言うと、両手をゆっくりと下げて再びジオバールを見た。


「セシリアがそんなに言うなら、俺たちがこの国を治めた暁には、ナターシャを馬小屋の世話役として雇ってやってもいいかもな」

「まあ、それはいい考えね、さすがジオバールだわ」


 口の片端を上げてバカにするように言うジオバールに、笑顔で賛同するセシリア。

 前世であんなに偉そうにしていた……ように見えたナタリーが、見窄らしい格好で馬小屋の掃除をしているところを想像すると、セシリアは愉快でたまらなかった。

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