第7章 — 炎と静寂
焚き火はうまく燃えていなかった。
湿った木。
パチパチと短い音を立てる、まるで嘆きのように。
しかし、その炎の揺らめきの中に——彼は「彼女」を見た。
少女。
小麦のような金色の髪、傷だらけの肌、胸を抱きしめるように両手を重ねていた。
一人だった。
三人の男たちに囲まれていた。
彼らの鎧は不揃いで、名誉ではなく「飢え」が身にまとわせていた。
「迷い込んだ聖職者か?」
一人が嘲笑った。
「清らかそうだ。高く売れそうだな。」
彼女は祈ろうとした。
だが、声は震えていた。
一人が彼女を木に押し付けた。
別の一人が杖を乱暴に奪った。
まるで儀式のように。
——その時、彼は動いた。
言葉はなかった。
音もなかった。
ただ、ぬかるんだ地面に沈む足音。
片方の目に宿る赤い光。
男たちは振り返った。
「なんだ、お前?黙ったまま呪うつもりか?」
剣が空を切った。
戦いではなかった。
——それは「終わり」だった。
一、
二、
三の斬撃。
三つの倒れた影。
焚き火が彼らの沈黙を呑み込んだ。
少女——アーリアは膝をついた。
恐怖ではなく、安堵によって。
「ありがとう…ありがとう…あなたに命を救われました…」
彼は彼女を見た。
だが、返事はなかった。
彼の目は違っていた。
一つは人の目。
もう一つは…赤く光り、内部に鎖が絡む封印の目。
彼女はその冷たさを感じた。
だが、同時に…どこか温かなものをも感じた。
「あなた…話せないのですね?」
彼は首を横に振った。
「そうですか…」
彼女は微笑んだ。
そのたった一つの表情だけで、彼の身体がわずかに震えた。
彼女は、この世界に似つかわしくない存在。
清らかすぎる——だからこそ「間違って」いた。
それでも、
彼は彼女を拒まなかった。
「…私、どこへ行くか分かりません。けど…あなたと一緒に行ってもいいですか?」
沈黙。
彼は一歩前へ出た。
棺の鎖が地を擦る音が響いた。
彼女はその背に、言葉なく従った。
許しも命令もなかった。
ただ——「信じる」心だけで。