表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/64

第7章 — 炎と静寂

焚き火はうまく燃えていなかった。

湿った木。

パチパチと短い音を立てる、まるで嘆きのように。


しかし、その炎の揺らめきの中に——彼は「彼女」を見た。


少女。

小麦のような金色の髪、傷だらけの肌、胸を抱きしめるように両手を重ねていた。


一人だった。

三人の男たちに囲まれていた。

彼らの鎧は不揃いで、名誉ではなく「飢え」が身にまとわせていた。


「迷い込んだ聖職者か?」

一人が嘲笑った。

「清らかそうだ。高く売れそうだな。」


彼女は祈ろうとした。

だが、声は震えていた。


一人が彼女を木に押し付けた。

別の一人が杖を乱暴に奪った。

まるで儀式のように。


——その時、彼は動いた。


言葉はなかった。

音もなかった。

ただ、ぬかるんだ地面に沈む足音。

片方の目に宿る赤い光。


男たちは振り返った。


「なんだ、お前?黙ったまま呪うつもりか?」


剣が空を切った。

戦いではなかった。

——それは「終わり」だった。


一、

二、

三の斬撃。

三つの倒れた影。

焚き火が彼らの沈黙を呑み込んだ。


少女——アーリアは膝をついた。

恐怖ではなく、安堵によって。


「ありがとう…ありがとう…あなたに命を救われました…」


彼は彼女を見た。

だが、返事はなかった。


彼の目は違っていた。

一つは人の目。

もう一つは…赤く光り、内部に鎖が絡む封印の目。


彼女はその冷たさを感じた。

だが、同時に…どこか温かなものをも感じた。


「あなた…話せないのですね?」


彼は首を横に振った。


「そうですか…」


彼女は微笑んだ。

そのたった一つの表情だけで、彼の身体がわずかに震えた。


彼女は、この世界に似つかわしくない存在。

清らかすぎる——だからこそ「間違って」いた。


それでも、

彼は彼女を拒まなかった。


「…私、どこへ行くか分かりません。けど…あなたと一緒に行ってもいいですか?」


沈黙。


彼は一歩前へ出た。

棺の鎖が地を擦る音が響いた。


彼女はその背に、言葉なく従った。

許しも命令もなかった。


ただ——「信じる」心だけで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ