第63章 — 常に見えるところに
アーリアとサエルは、徴募所で手続きを済ませるために進んでいた。そこでは、到着したばかりの冒険者たちの名簿が整理され、登録が進められていた。ジョアナ・ベルフォードは、まさにその最中で指示を飛ばしながら慎重に記録を取っていた。
そのとき、彼女の目が彼ら二人に留まると、顔色が一変した。
慌てて群衆から引き離すように、二人を別室へと連れ込んだ。
廊下を抜けて戸を閉めると、その姿はまるでコメディのようだった。
「あんたたち、何してるのよ!ここは“マーケド”にはふさわしくない場所よ!そんな…悪いことをしてるんじゃないでしょうね?“マーケドらしい”こととか…」
普段の荘厳で高潔なパラディン像からはほど遠い、まさに素のジョアナの姿がそこにあった。
アーリアは苦笑しながら答えた。
「生き延びるにはお金が必要なんです。棺を引いているだけではどうにもなりませんから。」
サエルはその騒ぎを黙って受け流しながら、彼女の“崩壊演技”を観察していた。
あの強固なイメージが音を立てて崩れていくのが、彼には驚き以上に滑稽に映っていた。
ジョアナは落ち着きを取り戻し、険しい表情で二人を見据えた。
「あなたが“マーケドである”ことを、人々は知らされるべきではない。大騒ぎになる! それに…助けを必要としている皆の前で、あなただけ特別扱いはできないわ。」
彼女はさらに声を硬くして続けた。
「言っておくけど…私はあなたたちを信用していない。もし、あなたがこの街で私の使命に邪魔をするようなことをしたら――私は自分自身であなたを排除する。
だからこれからは、あなたたちを四六時中監視します。あなたがどこへ行こうと、私の視界から外れないように。」
アーリアはため息をつき、サエルもうなずいた。
ジョアナの提案は――少なくとも今は――疑いを避けるための戦術的妥協なのだと理解して。
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