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第6章 — 血に濡れた静寂

最初の刃は空を裂いた。


その次は、肉を裂いた。


音は戦のそれではなかった。

内側を引き裂くような破裂音だった。


ゴブリンたちは、群れで襲いかかる。

無秩序だが、愚かではない。


彼らは「躊躇」の匂いを知っている。

目の揺れ、手の震え、魂の裂け目を嗅ぎ分ける。


だが、彼にそれはなかった。


守るものなど、もう何もなかったから。


一体の胸を剣が貫き、

もう一方の刃が、別の者の胴を裂いた。


動きには感情がない。

あるのは、反射で覚えた「死の舞踏」だけ。


一体が叫び、もう一体が崩れる。

牙が足を噛もうとした瞬間、顎が砕けた。


血が仮面を汚し、

包帯を伝って腕を染め、

土と葉と過去を同時に濡らす。


それでも、彼は何も感じなかった。


森はただ、見ていた。

手出しもせず、言葉もなく。

まるで、飽きた神々が沈黙を選んだように。


生き残った者たちは動揺した。

二体が逃げ、一体が後退する。


しかし、その中で一体だけが残った。


他より大きく、

傷に覆われ、

片肩の装甲は砕けていた。


目には怒りも恐怖もなく、

ただ——意志があった。


二者は衝突する。

古の岩のように。


斬撃、

防御、

刺突、

転倒。


剣はその胸を貫いた。

まるで「赦し」のように、静かに。


そして、沈黙が戻る。


欠如の沈黙ではなく、

雨の後のような静けさ。

刃から滴る記憶。


すべての憎しみが終わった後に残るもの。


彼は一息吐いた。

必要ではなかったが、

自分が「まだここにいる」ことを確かめたくて。


右目の封印は——動かなかった。


鎖は切れない。


なぜなら、この程度では、彼を壊すことはできないからだ。


剣を灰色の布で拭い、彼は振り返る。


棺はそこにあった。


静かに。

変わらず。

軽く……あるいは、重すぎて測れない。



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