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第5章 — 緑に沈む

火のない街は、いつの間にか背後に消えていた。

あるいは、彼の足元から溶けていったのかもしれない。


石の大地は、やがて根に覆われ、

壊れた柱の代わりに、曲がりくねった幹が立ち並ぶ。


気づけば、彼は森の中にいた。


門も標もない。

ただ、廃墟から湿った沈黙へと続く見えない境界線を越えただけだった。


空気は重く、

葉の先からは、古の露が涙のように垂れていた。


足は湿った土に沈み、

鎖は蔦に絡まり、

棺は苔むした岩を引きずって鈍く擦れた音を立てる。

その音さえ、この森では何かを起こすのを恐れているかのようだった。


彼は振り返らなかった。

木々は壁のように密集し、

森は彼を歓迎するのではなく、静かに飲み込んでいった。


その時、最初の音が聞こえた。

微かな、しかし確かな音。

まるで、苛立った何かが木を爪で叩くような気配だった。


二度目。

三度目。


それは鳥ではない。

狼でもない。


小さくて、だが強い憎悪を孕んだ「存在」——


見る前に、彼は感じていた。


最初の一体が現れた。

背が低く、刃は歪み、目は濁っている。

歯は多すぎた。


ゴブリン。


次々と現れる。

木の根元から、泥の中から、枝の上から。


一体は、人間の子供の頭蓋骨を腰にぶら下げていた。


彼は怒らなかった。

もう、明確な感情すら持てない。


だが、その手は剣を握る。

無意識に、確かに。


「肉を求めるなら……」


「せめて、鉄を味わってもらおう。」


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