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第43章 – 聖都サンタの帰還
ジョアナは、瀕死の状態で聖都「サンタ」へと帰還した。
治療院で数日間、手厚い治療を受けながら、彼女は戦いの余韻と向き合っていた。
身体の痛みよりも、心に残る喪失の方が深かった。
報告書を書く前に、彼女は一つの場所へ向かう決心をする――エリアスの妹が暮らす孤児院だった。
静かな午後、ジョアナは孤児院の扉をノックし、少女の前に膝をついた。
「エリアスは、最後の瞬間まで人々のために祈り、戦い、そしてあなたのことを想っていました。」
その言葉を聞いた瞬間、少女は声を押し殺して泣き始めた。
大切な兄を失い、この世界にたった一人残された悲しみが、彼女の小さな身体からあふれ出した。
ジョアナは、少女をそっと抱きしめた。
「もう一人じゃない。あなたを私の娘として迎えたい。
エリアスの犠牲を無駄にしないために、私はあなたを精一杯守り育てます。」
窓の外には、夕日が差し込んでいた。
赤く染まる空の下で、二人の静かな誓いが交わされた。
それは、新たな物語の始まりだった。
かつて誰かの祈りが彼女を支えたように、今度は彼女が誰かの光となる番だった。
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