表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

第2章 — 風の吹かぬ場所

鳥の声も、虫の音もなかった。

囁きさえもなかった。


あるのは、鎖の音だけ。


一歩進むごとに、金属の擦れる音が響く。まるで、廃れた神殿の鈴のように。


少年は思い出そうとしていた。

重さを感じる前のことを。

木の中から囁く声の前を。

自分が選んだのか、強いられたのか分からぬ契約の前を。


記憶は割れたガラスの上を歩くようなものだった。

拾おうとすれば、血が滲んでくる。


少年が知っていることは、三つだけだった。


棺を開けてはならない。

棺は自分に繋がれている。

そして、その中の「何か」は、こちらを見ている。


「まだ歩いているのね…?」

女の声がした。遠く、壁の向こうから聞こえるような響き。


少年は答えなかった。

傲慢だからではない。

話すことを、もう忘れてしまったのかもしれないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ