沈黙の村
朝の陽が昇る頃、ムラトの遠征軍は、ついにマル=ハディールの門前に立った。
古びた石の門は開いていた。
錆びついた蝶番は片側が外れ、まるで何かにこじ開けられたかのように、斜めに傾いていた。
だが、奇妙なことに――その周囲に、争いの痕跡はなかった。
「……開け放たれたまま、何日も経っているな」
副官のバヒーラが眉をひそめる。
「だが、人の匂いはある。昨夜、火を使った形跡も……」
「村は、“生きて”いる」
ムラトは短く言い切る。
「だが、“住んで”いる気配がない」
一行は、兵十余を前に出し、警戒態勢のまま石畳の村道へと踏み入った。
両側には白く塗られた家々が立ち並んでいた。
窓は閉ざされ、扉には鍵もなく、しかし開く気配もない。
――どこかの窓で、布が揺れた気がした。
――屋根の陰から、誰かがこちらを見ていたような気がした。
「……幻じゃない。誰かが、中にいる」
タリクが声を潜めて言う。
「けど、音ひとつ立てないとは……どういうことだ」
兵たちは口を閉ざし、足音と馬の蹄の音だけが響く。
干されたままの洗濯物、食器の残るテーブル、揺れないブランコ。
それら全てが、「ほんの一瞬前まで人が暮らしていた」ことを示していた。
だがその“気配”だけが、異様に生々しかった。
やがて彼らは、村の中央を抜け、石段を上がる。
そこには、かつて村を統べていた者の館――ジャリールの屋敷があった。
だが門は閉ざされていた。
兵が打ち鳴らしても、返答はない。
扉には鍵はなく、ただ内側から、何重にも板が打ちつけられていた。
「……籠城しているのか?」
「いや、襲われた形跡はない。だが、“閉じこもった”わけでもなさそうだ……」
ムラトはしばらく沈黙し、やがて扉に向かって声を発した。
「ジャリール。私はムラトだ。スルタンの命を受け、援軍として来た。
もし中にいるなら、返答してくれ。……我が友よ」
沈黙が続く。
鳥の声も、犬の鳴き声もない。
ただ、館の内側で――誰かが、ゆっくりと歩くような微かな音だけが聞こえた。
だが、それが返答だったのか、ただの物音だったのか。
判別はできなかった。
日が傾き始めた頃、哨戒に出ていた兵のひとりが慌てて戻ってきた。
「閣下――村の外れに、生きている者が!」
ムラトは即座に立ち上がり、兵士を伴って村の北端へ向かう。
そこには崩れかけた石塀の影に、ひとりの男が蹲っていた。
裸足で、泥と血にまみれた身なり。
痩せ細った四肢には複数の引っ掻き傷があり、布の袖は引き裂かれていた。
髪は乱れ、唇は乾ききっている。
何よりも――その目が、正気を離れていた。
「……水をくれ、水を……!」
男は掠れた声で叫んだかと思えば、急に石塀に爪を立て、何かから逃れようと這いずった。
「落ち着け。我々は味方だ」
バヒーラが声をかけ、兵が水袋を差し出す。
だが男は水に口をつけた途端、突然喉を押さえて咳き込み、泣き出した。
「だめだ……! ここにいたら、だめだ……!」
「“それ”が、見るんだ……。いつも、どこかから……!」
ムラトが膝を折って顔を覗き込む。
「“それ”とは何だ。誰が、何が村をこうした」
男は震えながら、泣き、呻き、唇を震わせた。
「目を……見るな……目を……形が……ない……けど……見える……」
「形がない? “それ”が村を滅ぼしたのか?」
「ここは、もう……戻らない……戻れない……!」
男は突然立ち上がろうとし、よろめいた勢いで地に崩れ落ちた。
兵たちが抱き上げようとするも、男は抵抗し――自ら顔を覆って叫ぶ。
「ここにいてはならない! “風”に、触れるな――!」
「“あの風”が、あの色が……あれは風じゃない……音でもない……!」
しばしの混乱ののち、彼は疲労と恐怖で意識を失った。
○ ○ ○
日が沈む前、ムラトは軍を村から退かせる判断を下した。
「村に留まるのは賢明ではない。今日のところは一度外に出る。
今夜、奴らがどこから来るか……それを見極める」
副官たちは訝しんだが、命令には逆らわなかった。
兵たちにとっても、あの沈黙の村に夜を過ごすことへの不安は拭えなかった。
小一時間の行軍ののち、丘陵の陰に幕営地を構える。
視界は村を見下ろせる位置にあり、もし何かが起きれば即座に察知できる場所だった。
――日が落ち、焚き火が点る。
兵たちは手早く簡易の柵と見張り台を設置し、いつもより多めに夜営の火を焚いた。
火が揺れるたび、誰もが、どこかから見られているような感覚に襲われた。
「……まるで、火を“見せつけている”みたいだな」
と、タリクが呟く。
「そう見せているのだ」
ムラトが答える。
「火の灯りが目印になる。夜の目は光に引き寄せられる。……人であれ、人でないものであれ」
火を囲んで兵たちは静かに食事を摂る。
乾いたパンと塩漬けの羊肉、わずかな香草粥。
だが、口を動かす者の表情はどれも強張っていた。
しばらくして、軍医ハッサンが例の錯乱した男の様子を見に来た。
「まだ昏睡状態にあります。脈は安定していますが……時折、寝言で何かを呟く」
「“目を見るな”“風に溶ける”……。まるで、詩のようですな」
「詩ではなく……遺言かもしれんな」
ムラトの言葉に、火がぱちりと弾けた。
月は雲に隠れ、空は墨のように黒く染まっていた。
遠く、村の方角にて、風もないのに木々が微かに揺れる音がした――ような気がした。
深夜――。
火の灯りも徐々に小さくなり、交代で巡る見張りだけが野営地の眠りを守っていた。
そのとき。
「閣下! 見張りから報告です!」
急ぎ足で近づいてきたのは、若き衛士カシム。
顔色をこわばらせ、唇がわずかに震えている。
「……村の方角に、人影が見えたと。屋根の上……だったそうです」
ムラトは立ち上がり、静かに問う。
「どれほどの距離か。数は?」
「ひとつだけです。背を向けていたそうです。だが、あれは……」
カシムは言い淀む。
「……あれは、どうしても“人”とは思えなかったと。だが、“祈っているように見えた”とも」
ムラトは部下と共にその方向を見下ろした。
月光が薄く村の屋根を照らしていたが、そこに影のようなものはなかった。
静かだった。ただ、あまりにも静かすぎた。
「その見張りを連れて来い。もう一度話を聞く」
やがて連れてこられたのは老兵のひとりだった。
沈着な性格で知られる男だが、今は額に冷や汗を滲ませていた。
「確かに……確かに屋根の上に何かを見ました。人の背丈、頭を垂れていた。
祈るように、あるいは……首を、吊られたように」
「だが、目を逸らしてから数秒で消えていた。
……それが、影だったのか、本当に誰かがいたのか……分からんのです」
その報告に、部下たちも顔を曇らせる。
「風もないのに……なぜか煙だけが、あちらに流れていきます」
「……焚き火の向きが逆だ。あれほどの夜風もないのに……」
言葉にするには曖昧で、証明には足りない。
だが、確かに“何かが起きつつある”という予感だけが積み重なっていく。
夜が明け、空にわずかな青が戻り始めた頃。
ムラトは全軍に告げた。
「――全員、松明を取れ」
兵たちがざわめいた。
松明は昼の行軍では用いない。だが、彼らの誰もが理解していた。
あの村は、陽の光が届いても“暗い”のだ。
「村に入る。今度は遠慮は要らぬ。扉が閉じられていても、構わず破れ。
隠れている者がいれば救い、敵であれば討て。
……“正気”を装うな。お前たちはすでに“異常”の中にいるのだ」
ムラトの言葉は静かだったが、誰よりも確かだった。
松明が灯される。
火は赤く、長い煙をたなびかせ、兵たちの影を歪める。
副官バヒーラが近づいてくる。
「村には……なにがあるとお思いですか」
「わからぬ。だが、“何もない”とは、もう思えん」
ムラトは答えた。
「目に映るものだけが全てなら、あの影も、声も、説明がつかん」
兵たちは列を成し、村の門を再び越える。
朝の風は生ぬるく、焚き火の煙すら逆巻くように揺れていた。
家々は変わらぬ沈黙のままそこにあった。
だが、松明の火に照らされると、その壁や扉がどこか“歪んで”見えるようだった。
最初の家に達したとき、ムラトは一言だけ命じた。
「破れ」
兵士が一斉に肩をぶつけ、扉が悲鳴のような音を立てて内側に倒れる。
家の中は、やはり無人だった。
だが――
壁の一面に、何かの“文字のようなもの”が刻まれていた。
乾いた泥、あるいは焦げた煤のようなもので引かれた奇妙な曲線。
どこか、既視感を覚えるような……しかし読み取れない。
「記録せよ」
ムラトは背後の軍医ハッサンに命じた。
次々に扉が破られ、村の静寂が“軍靴の音と焔”に乱されていく。
だが、不思議なことに――
その焔に、誰一人文句を言う者はいなかった。
「……報告です!」
小走りに近づいた偵察兵が、呼吸を乱したまま言葉を紡ぐ。
「南側の路地裏にある民家の地下から……祈りのような、いや、
呪文のような音が響いております。かなりの人数かと……」
ムラトの表情がわずかに動く。
「人数、だと?」
「はい。歌ではありません、統一感もありません。
ですが……声が折り重なるようで、まるで……」
「……何かを“起こそう”としているように聞こえるのです」
その一言に、辺りの空気がぴんと張り詰めた。
ムラトは即座に指揮を取る。
「私が行く。兵を三十名、武装は盾持ちと火持ちを。
副官、後続は周囲の家屋を警戒させろ。包囲は維持しろ」
「了解しました」
現場に向かうムラトの足取りは重くも力強かった。
――家は、見た目においては他と何ら変わりはなかった。
だが、扉を開けた瞬間、確かに“空気が違う”と全員が感じた。
地下への階段は薄暗く、湿気と煤の臭いが立ち込める。
松明を掲げた兵が先行し、ムラトがそれに続く。
下へ、下へ。
石の段が軋むたびに、あの“声”が少しずつ近づいてくる。
――祈りのような
……呻きのような
……笑いのような
……涙のような
意味を持たぬ声が、意味を持って響いていた。
やがて、階段の先に扉が現れる。
木製だが、内側から何重にも補強された痕跡がある。
だがその隙間から、確かに光と音が漏れていた。
ムラトは剣の柄に手をかけ、兵たちに合図を送る。
「開け」
斧を持った兵士が一気に扉を叩き破る。
その瞬間、地の底から“声”が爆ぜた――。
――それはまるで、祈りが噴き出すような衝撃だった。
無数の人影が、暗がりの中で一斉にこちらを振り向いた。
白目を剥いた者、舌を噛み切った者、顔の皮が裂けた者―
そして中央には、
奇怪な印が刻まれた祭壇。
その前で、まだ“祈り”を捧げる“誰か”の影。
――その地下空間には、誰もが息を飲んだ。
声。祈り。呻き。
そして、火の揺らめきの中でうごめく、歪な群れ。
「……う……うわ……」
先陣のひとり、カシムが後退りした。
ムラトはすぐに制止の声を上げようとした。
だが――遅かった。
「やめ――ッ」
轟ッ!
乾いた銃声が、空間の底を裂いた。
銃弾はうねるように跳ね上がり、
祈りの列の一角――皮膚の半ばが融けたような者の胸を撃ち抜いた。
その瞬間。
「――グァァアアアアアアアアア!!」
誰とも知れぬ者が、悲鳴を上げて立ち上がる。
それを合図にしたかのように、
“祈り手”たちが、一斉にこちらへと向きを変えた。
その動きは……“人間”ではなかった。
這う者。飛びかかる者。
関節の向きを違えたまま手足を振り上げる者。
そして、何より恐ろしかったのは――
彼らの誰もが、笑っていた。
「応戦しろッ! 下がるな! 防げ!」
ムラトの怒号が響く。
松明が振るわれ、剣が抜かれ、
狭い地下室での乱戦が始まった。
銃声が連なる。叫びが交差する。
地の底で、“人”と“それ以外”が交わる最初の戦が始まったのだ。
「盾を前へッ! 下がるな、列を崩すな――ッ!」
ムラトの怒声が、混濁する地下の空気を裂く。
盾兵たちは松明の火とともに前線を支え、次々と襲いかかる“祈り手”たちの狂乱に立ち向かっていた。
剣が振るわれ、木の盾に爪が食い込み、
肉が裂ける音と悲鳴が交じり合う。
ムラト自身も、敵の一体――
全身が炭のように黒ずみ、だが瞳だけが白く爛々と光る男の首元を、
曲剣の鋭い斬撃で斬り払った。
ジャリ……ッ!
異様に乾いた手触り。
肉体ではない“何か”を切ったような手応え。
その時――
「隊長!! 上から、上からも……ッ!」
通路の奥にいた斥候の叫びが、砲声よりも鋭く刺さる。
――地上が騒がしい。
いや、“騒がしすぎる”。
「何が……?」
「外の隊列が……襲われて……悲鳴が、あちこちから――!」
ムラトは即座に判断した。
「――退け。全員、退却する! 盾を崩すな、押し返せッ!」
盾兵たちが呼応し、徐々に後退しながら防御陣を張る。
後衛が負傷者を担ぎ、先行して退路を確保する。
だが“それ”らは止まらなかった。
扉を突き破り、火に焼かれながらも笑い、叫び、祈りながら突進してくる。
「外まで、行かせるな……!」
ムラトの曲剣がうなり、
燃えさしの松明が血と脂を弾く。
兵たちは必死に階段を登り、
ようやく地上の光が視界に差し込んできた。
だが――
村の中庭も、すでに戦場だった。
無数の“村人だったもの”たちが兵たちに襲いかかり、
火が上がり、叫びが響く。
地獄は、地下だけにあらず――村そのものが崩れ始めていた。
「野営地へ退けッ! この村はもう――!」
ムラトの叫びが戦場に響き渡る。
だが、誰もそれに即座に応じることができなかった。
村の中央通り。
火の手が回り、建物が軋みを上げて崩れかけている。
石畳の路上には、倒れ伏す兵士。
その背に馬乗りになった“それ”が、何度も何度も石を振り下ろしていた。
「やめろッ!」
カシムが叫び、斧を構えて飛びかかる。
だが“それ”は、まるで音に反応するように、素早く振り返った。
白濁した両目。
顎の骨が外れ、だらりと垂れた口元から唾液と血がこぼれる。
かつての村人。バスランの叔父だった。
「……ウソ、だろ……?」
カシムが斧を止めた一瞬。
グシャ。
“それ”は石を拾い上げ、カシムの顔面へ全力で叩きつけた。
目玉が飛び出し、歯が砕け、悲鳴ではなく湿った音だけが周囲に響く。
ムラトはすぐさま駆け寄り、剣を振り下ろした。
“それ”の首が跳ね、ようやくその場は静かになった。
「誰か……生きてる者は……!」
振り返ると、別の路地では盾兵二人が、
狂ったように爪を振り回す少年の群れに囲まれていた。
盾の隙間から手が差し込み、顔を掴み――
肉が、裂けた。
「ザイード!」
誰かが名を呼ぶ。だがその声も、焚かれた松明の燃える音にかき消される。
兵士たちは散り散りになりながらも、ムラトの指示を受け、
なんとか北門方面へと押し返し、道を切り開いていく。
――ムラトの剣も、既に幾度となく血と炎に濡れていた。
彼は振り返らなかった。
もう、置いてきた者たちの名前を数えるのはやめていた。
森を抜けた先の坂道。
土埃の立ち上るその先に、かつて築いた野営陣地が見えてきた。
「バヒーラ!」
ムラトが声を放つと、背後の茂みから鋼鉄の鎧音が応じた。
「ムラト! 無事だった…!」
彼の義妹であり、最も信頼する副官の一人。
肩に返り血を浴びながらも、目の光は確かだった。
その後ろには、血塗れの包帯を抱えた男――軍医、ハッサンの姿もある。
「……こっちも、あまり芳しくはないな」
「報告は後だ。とにかく戻って――」
その瞬間だった。
風が変わる。
焚き火の煙がこちらへと流れ、
野営地の奥から、“歌のような、祈りのような、呻き”が聞こえてきた。
ムラトが手を上げ、全員を制止する。
「……何だ?」
草むらに身を屈め、丘の上から野営地を見下ろす。
そこには“人間だった何か”が群れを成していた。
食糧を漁る者。
兵の死体に口を付けて蠢く者。
焚き火の周囲で踊る者――それは、狂気の祝祭だった。
テントの一つが倒れ、中から呻き声が漏れる。
「やめろ……お願いだ……」
だが、“それ”は聞いていない。
何本もの手が突き出され、もがき、内臓が引き出されていく。
バヒーラが小さく呻いた。
「……こんな……これが……」
ハッサンは顔を覆いながら呟いた。
「これは……もはや病ではない。災いだ……」
ムラトは、剣の柄を強く握った。
「戻れない、ということか」
バヒーラが問いかけた。
「これから、どうする?」
風が再び吹いた。
火の粉が舞い、かつての仲間たちの断末魔が耳を刺す。
○ ○ ○
月明かりが差し込む森の奥。
薪すら満足に集まらぬ中、残されたわずか十数名の兵士たちは身を寄せ合っていた。
疲弊。沈黙。恐怖。
誰もが言葉を選び、音を立てることすらためらっている。
そんな中、若い兵の一人――
肩を斬られ、包帯で固めた男が立ち上がった。
「……ムラト将軍」
声が震えていたが、
それでも彼は目を逸らさなかった。
「我々では、もう……。この“ものども”を押さえるなど、到底不可能です」
ムラトは黙って彼を見た。
火の光に照らされたその顔には、疲労ではなく、責任の重さが刻まれていた。
「我が身を本国に返し、スルタンに報せます。
本格的な討伐軍の編成を――いや、“災厄封じ”の布告すら必要かもしれません」
沈黙。
誰もがその言葉の意味を理解していた。
この地は、もう“戦場”ではない。
災いの地として、封じられるべき何かに変貌しつつある。
バヒーラが囁いた。
「……たどり着ける保証は?」
ハッサンも頷く。
「この森にも、既に“奴ら”が紛れているかもしれない。
誰が、どの道を使って、どのくらいの期間で戻れるのか……」
だがその若き兵は、動じなかった。
「それでも、やらねばなりません。
このままでは……我々すら、明日を迎えられないかもしれない」
ムラトはしばし考え、やがてゆっくりと立ち上がった。
「名は?」
「カシム・バサル。小姓上がりの新兵であります」
「そうか。ならば――」
彼の肩に、ムラトは手を置いた。
「お前に、未来を託す」
その言葉は、あまりにも重い。
だが、誰かが背負わねばならない“生還の責務”だった。