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009 編入学

 さて、学校初日です。

 僕とアカ、ドラちゃん、ドラニちゃん、龍愛が学校だ。

 中途編入だからすでに教科書等はもらっている。

 僕とアカは鞄を持って、ドラちゃん、ドラニちゃん、龍愛はランドセルを背負った。


「では行って来ます」

「行ってらっしゃい」


 稲本さん夫妻の見送りを背に、鳥居をくぐって階段を降りた。ドラちゃん、ドラニちゃんは5、6段ずつポンポン飛んで降りていく。


「龍愛も龍愛も」

 ポンポン飛ぼうとするが無理だろうな。こけた。

「うえーん。お姉ちゃんが先に行った」


 慌ててドラちゃんが戻って来て龍愛を立たせてやって頭を撫でてやった。ドラニちゃんは服を叩いたふりをして汚れ飛んでけをしている。龍愛も一応神だから怪我はしないが、こいつとろい。


 龍愛はドラちゃんに撫でられて泣き止んだ。面倒になったドラちゃん、龍愛を抱いてポンと階段下まで飛んで行った。ドラニちゃんも飛んだ。

 龍愛はしっかりドラちゃんにつかまっている。これはすっかり末っ子ポジションだな。


 階段を降り切ると街だ。階段から道路がまっすぐ伸びている。参道だ。階段下に一軒土産物屋と食堂を兼ねた店がある。あとは数軒店があるだけだ。神具店とか。典型的なシャッター通りだ。


 道ゆく出勤途中の人が僕らを見てびっくりしている。今日は認識阻害なしだから目立つ。


 参道の両脇が旧市街だな。歩いて行くと大きな鳥居が道路を跨いでいる。ここまでが参道だ。あとは新市街だ。僕らの学園も新市街にある。

 参道が切れたところの十字路を右へ、しばらく歩いて行くと学園の正門が見える。


 ここまでくると生徒がたくさん歩いている。僕らを見てヒソヒソと話をしている。


 僕とアカが並んで歩いて、ドラちゃん、ドラニちゃんは飛ばないだけでいつも通り僕らの前に行ったり後ろに下がったりして、龍愛が必死についていく。


「何あれ」とか声が聞こえる。


 正門に着くと厳つい男、体育教師だろう、こちらを見て威嚇は、出来ない。目を逸らした。

 一応挨拶はしてやろう。

「おはよう」

「あ、ああ」


「おはようございます」

 アカが挨拶してやると真っ赤になってしまった。

「おは、おはようございます」


 真っ赤になって突っ立っているゴリラ、脇を通る生徒に侮蔑の眼差しを投げかけられているのに気がつかないのであった。


 ドラちゃんがからかいに行った。

「おじさん、事務室はどこ?」


 おじさん呼ばわりされて正気に戻ったゴリラ、睨みつけるがすぐ敗けを悟ったらしい。ゴリラの野生の勘はなかなかだ。

「あっちです」

 指差して教えてくれる。

「ありがとう。またね」


 龍愛が真似をする。

「またね」

 調子に乗ったガキがと思って龍愛を睨みつけるが、再び敗けを悟ったゴリラ。

「あ、ああ」

 どこを見て龍愛に敗けを悟ったのか。なかなかのゴリラである。


 事務室に着いた。

「こんにちは」


 窓口の女性はこちらを見てポカンとしている。しょうがない。もう一度。

「こんにちは」


 女性の顔がポッと赤くなる。

「こ、こんにちは」


「転入して来た樹乃ですが、どこに行ったらいいのでしょう」

「あ、はい。お待ちください」


 書類を持って来た。

「樹乃神様、樹乃朱様、樹乃龍姫様、樹乃龍華様、樹乃龍愛様ですね」

「はいそうです」


 奥の方で、なんで生徒に様などつけるという顔をして中年男がこちらを睨んだ。僕が見るとすぐ目を逸らして見なかったふりをしている。


「では応接室でお待ちください。すぐ担任を呼んで参ります」

 受付嬢、ダッシュで事務室を飛び出していった。さっき、廊下は走らないと貼り紙がしてあったが。


 もう一人女性が出て来て応接室に案内してくれる。

「こちらでございます」

 すぐお茶とお菓子が運ばれて来た。

「どうぞ」


 案内してくれた女性とお茶を運んできてくれた女性、二人とも出て行かない。

 これで3人僕たちのために席を離れたな。


 ドラちゃんが食べていいという顔をしてこちらを向いた。

「いただきなさい」

 アカが応えた。


「龍愛も」

「はい。どうぞ」

「美味しい」

 お子さん3人の感想だ。食べてみるが中々の菓子とお茶だ。お茶も上等だな。


「いかがでしょうか」

「お茶もお菓子も美味しいです」

「それは良かったです。いつでも事務室においでください。お茶とお菓子は用意してあります。理事長用のが」


 最後の方が声が小さかった。いいのか理事長用の茶菓子を出してしまって。

「あの理事長、味なんてわかりません。高級茶碗セットで出せば良いお茶だ、菓子だと思いますから」

 へえそうなの。


 猛ダッシュで出ていった事務員さん、女性二人を連れて来た。教師らしい女性のうち一人はゼーハーゼーハー言っている。事務員さんは平気だ。


「タフですね」

「実業団対抗女子駅伝の選手ですから」

「なるほど」

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