075 山川内閣総理大臣臨時代理が異形等対策室に出向いて異形討伐依頼をする
異形等対策室に山川内閣総理大臣臨時代理が出向いて来た。
「こんにちは」
「はいこんにちは」
姫川秘書が出た。
「山川総理臨時代理ですがすまないが、室長はいらっしゃるか」
「姫乃と申します。大和撫子です。室長はいますよ。爺さん同士で将棋をやっています」
「どちらが勝ちそうか?」
「ヘボ将棋で、王将が次々出て来ますから、どちらも反則負けですね」
「そうか。実は九州で異形が出たので対策室で討伐していただきたいのだが」
「ああ、そうですか?それで何体?」
「わからんのだ。複数いることはわかっているが」
「まずは調べに行くようですね」
「こうしている間にも福岡市に近づいている。福岡市は160万の人口だ。パニックを起こすとそれだけで大勢が危ない状態になる。頼めるか」
「いいですよ。退治する時は、眷属となって国家公務員ではなくなります。初穂料一体一億円ですが。往復は国家公務員ですので旅費は国からです。異形等対策室以外の眷属に依頼した場合当然旅費は初穂料に加算です」
「細かいな。承知した」
「では早速。自衛隊機で行きましょうか。戦闘機と言いたいところですがC-2で十分でしょう。ちょうど百里にいるみたいですし」
「わかった。降りる空港は」
「現場の上空から飛び降りますから空港はいいです」
「そ、そうか。パラシュートを用意しておこう」
「いりません。ええと何人かな。爺さんは行くかな。おい、いつまでヘボ将棋をしている」
拳銃を取り出しパンパンと撃った。隣の部屋の王将がご臨終になった。
「いいところだったのに。俺が勝つところだった」
「いや、俺だ。その穴が空いているところに俺の王将の駒があった」
「バカを言え。俺の駒だ。おいまだ王将が二つある。さてはお前だな」
もう一度パンパンと銃声がした。
「異形討伐、行くか?」
「ヘボ将棋には付き合ってられん。行くぞ」
「では、5人行きます」
「いつも拳銃で会話するのかね」
「年寄りだから聞こえないんです」
「俺は聞こえるぞ」、「俺もだ」
「百里までのヘリは用意した。屋上ヘリポートに着く」
さっきから日本刀を眺めていた女が言った。
「あれはどなたかね」
「高倉です」
「ひょっとして唐獅子牡丹か」
「あたり」
「それじゃあの小銃をいじっているのは、銃オタか」
「そう」
「あんたは、皆殺し愛子、さん」
「たった三人やっただけで皆殺しなんて大袈裟だわ」
パンパンパンと音がした。壁に三つ穴が空いた。
「そろそろ来るよ」
「よし、行こう」
錫杖を持った修験者が二人出てきて5人で出て行った。
金属の扉が開いた。
「お茶が入りましたよ」
事務員さんがにこにこしている。
「ああ、いただこう。この扉は鉄かね」
「いいえ、龍愛ちゃんが作ってくれた扉で鉄ではありません。あの銃弾が防げるようです。危ないから出ないでいいと言われています」
「へえ。そうか。仕事は何をしているのかい」
「はい、出張旅費の算出とか。討伐代の請求とか。誰もいない時の電話番とか。この間の討伐代はなかなか支払われなくて、担当者が異形対策装備の調査に行って餌になってしまったようですけど」
「そ、そうだな。今度はすぐ支払われるだろう。これは美味いお茶だ。飲んだことはないな。どこのお茶かい」
「それはクロちゃんとキイちゃんが持ってきてくれます」
もう一人の若い女性が答えた。
「クロちゃんとキイちゃんとはいい人なのかね」
「やだあ、おじさん。子犬よ」
おじさん。憮然とする山川であった。
「子犬?」
「そう。龍愛ちゃんの監視をしてるんだけど、可愛い」
電話がかかってきた。
「はい、異形等対策室です」
「こちら北海道警。至急お助け願いたい」
「どうしました」
「藻岩山に異形が出た。函館が危ない」
「何体ですか?」
「2体だ」
「承知しました」
「君は誰かね」
「あなたはどなたでしょう」
「失礼した。道警本部長の寒川ともうします」
「私は、秋月2佐と申します」
「まさか、実弾秋月さんか」
「ちょっと国籍不明機に実弾を撃っただけです。相手のパイロットが下品な仕草をしたからね。それに領空侵犯ですし」
「まあそうだけど、よく見えたな」
「近づいてみたからね」
「それ以上聞かないことにしよう。では頼んだよ」
「了解です」
「おじさん、ゆっくりしてってね」
秋月2佐が電話をかけ始めた。
「宗形さん、函館藻岩山2体だって。乗ってく?ええ、いいの。じゃあ支援ということで百里からF-15で行くね。ええ、途中でランデブー。わかった。楽しみ」
また電話をかけ始めた秋月。
「ヘリ一機、百里まで。百里から異形討伐支援ということでF-15で函館。手配しておいて」
奥で着替えして出て来たのは耐Gスーツの秋月であった。
「じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
「あああ、一人になっちゃった。あ、クロちゃんとキイちゃんが来た」
子犬2匹が残った事務員さんの机の上に出現した。クラッシックなお茶の缶をどこからか取り出した。
「ありがとう。無くなる所だった」




