074 佐賀で異形発見 & 討伐代未払顛末
一週間後、佐賀市三瀬村藤原 井手野の吉野山キャンプ場付近で異形確認。福岡市に向けて進行中との連絡が佐賀県警に入る。すぐ県境だ。
佐賀県警。
「いいかゆっくり現場に行け。着く頃には福岡県だ」
県警本部長に言われた現場。サイレンは鳴らしたが安全運転で向かった。吉野山キャンプ場に着いた。あたりには食い散らかされた死体があった。何人かわからない。相当数だ。
現場は、異形等対策マニュアルに書いてある通り、現場から直接異形等対策室に連絡した。
「異形等対策室です」
「こちらは佐賀北警察署ですが、異形発生のため報告します」
「どこですか?」
「現場は佐賀市三瀬村の吉野山キャンプ場です」
「異形に近づかないでください。遠巻きで監視願います」
「それが手首とか足首が散乱して異形はすでにいません」
「いつ異形発生を認識した」
「一時間ほど前一報がありました」
「どうしてすぐ連絡しない」
「ゆっくり現場に行けとの指示がありました」
「どこから」
「県警本部長です」
「わかった。そいつは人殺しだ」
すぐ警察庁から人事異動の発表があった。佐賀県警本部長は、福岡県警本部長付であった。即日異動。
福岡県警本部長は警察庁から前佐賀県警本部長は殉死だろうなとの電話を受けた。
マスコミは吉野山キャンプ場で数十体の猟奇死体発見、警察の現場到着遅れると大騒ぎしていた。福岡県警本部長は電話の真意を理解した。
佐賀県警のヘリで、元佐賀県警本部長が護送されて来た。犯人扱いである。すぐ福岡県警のヘリに移して、吉野山キャンプ場から山越して早良区方面に進行中の異形の目の前に落とした。
そろそろ異形について隠蔽することが難しくなったので、政府は利用した。
「佐賀県内で異形が発生し、九州初めての異形なので対策が後手に回り吉野山キャンプ場で多くの人が犠牲になった。佐賀県警本部長は責任を感じ志願して福岡県警に異動。前線に出て殉死した」
マスコミにはそのような趣旨で福岡県警より公表した。もちろんマスコミ上層部、政府は初めてのフリをした。
UFO対策室が異形等対策室になったとSNSに流れ異形等対策室が自然と認知された。
異形はマムシ岩を通過、坊主ケ滝方面に進行中と政府に連絡が入る。福岡市方面に進行していることがわかった。政府は首相が議長の対策会議を作った。とりあえず自衛隊と警察にはなんとしても坊主ケ滝で止めろと指示した。
首相は異形等対策室に出動命令を出した。
異形等対策室から、
「異形に対応できる唯一の龍愛神の眷属に前回の討伐代金が未払いとなっており、神を欺く行いをする政府には天罰が降る。眷属は行かないと言っている」
「それに眷属は龍愛神の命令がなくては出られない。様子見の事務官をこれから新幹線の予約をとって派遣するつもりだ」
と返答があった。
首相が喚いた
「異形等対策室はどうなっている。指揮官は俺だ。全員首だ。即刻入れ替えろ」
「それが、異形に対応できるのは龍愛神様の眷属しかおりません。自衛隊も対応できません。首にしたら福岡市は壊滅します。人口160万、大半が食われてしまいます」
「くそ、龍愛神などは邪神だろう」
首相の頭が弾けた。内部から爆発したようだ。
慌てて平伏する会議出席者。頭は床につけ手を頭の上で合わせて何卒何卒と言っている。
官房長官、ややあって起き上がった。総理が亡くなったので内閣総理大臣臨時代理になった。
「こいつは邪教徒だ。我らは龍愛神様の敬虔なる信者だ。この死体はすぐ片付けろ」
対策会議に出席していた財務大臣、真っ青になって財務省に走って戻った。
未払いの元凶の事務官を捕まえて、自衛隊機に乗せて、異形の前に放り出せと手配した。理由は異形対策特殊装備品支出見積現場確認などと理由がでっち上げられた。
討伐代の支払い、もとい初穂料は延滞のお詫びも含め一億五千万円を即刻振り込んだ。
龍愛神のマネージャーを名乗る宗形から内閣総理大臣臨時代理に電話があった。
「振り込みを確認した。眷属の口座に討伐代金を送金するがもちろん無税よね。財務大臣などによく話しておいてね。口座情報は目の前よ。それじゃよろしくね。総理はお気の毒だったわね」
紙がピラっと臨時代理の前に落ちて来た。口座がいくつも書いてある。
この口座を調べると頭が弾ける。財務大臣は再び青くなって財務省に戻り事務次官と国税庁長官を呼び出した。
「知っていると思うが、首相が龍愛神を邪神と罵ったら頭が弾けた。この口座は龍愛神様の関係口座だ。どんな振込があっても名義人に課税してはならない。アンタッチャブル口座だ。触れてはならない。頭が弾けるぞ。それから今後、異形討伐代は遅延なく支払え。今福岡市に異形が向かっている。討伐してもらえなければ160万の命が危ない」
国税庁長官は口座の一覧の紙をもらって出て行った。
「ふん。こんなもの。俺の権力で丸裸にしてやる」
国税庁長官は、税で天下を取ったつもりである。場合によっては総理さえ丸裸にできる。長官は国民全て自分の支配下だと思っている。
長官室に戻って、次長に命じた。
「この口座の持ち主を徹底的に調べどんな収入でも課税しろ」
言った途端に頭が弾けた。
次長は目の前で頭が弾けるのをみて血を浴びて、失神した。
国税庁は騒然となった。
龍愛神関係の口座を調べろと命じたら頭が弾けた。神はいると全員が思った。
口座の紙は血まみれである。誰いうとなく、ブラッディ口座と命名されて、触れれば死ぬと言われるようになった。
次長が財務大臣に報告に行くと一言。
「警告したのに馬鹿なやつだ」
そして死体は警察病院に運ばれ業務上の死亡ではなくたんなる脳出血による死亡にされてしまった。確かに脳出血ではあった。
そういえば、首相の死亡理由は腹上死との噂がSNS上で広まった。
噂が十分広がった後に臨時代理が記者会見して、死亡理由が死亡理由なので国葬は行わない。家族葬であり政府は関与しないと発表した。
記者たちは腹上死と思った。そう書いた。
流石に大手は、都内某ホテルで宿泊中死亡と記事にした。
ワイドショーの解説者は、これは飲食店女性従業員と警察が発表すると一部の風俗の人を指すのと同じでラブホテルで腹上死したということだと訳知り顔で解説した。
世間的には腹上死で落着したが、政府内でヒソヒソと龍愛神の神罰と囁かれる事態になった。
もちろん次回総選挙で議席大躍進と言われている党の党首には真実が伝わった。




