072 シン 唐獅子牡丹、銃オタ、皆殺し愛子に訓練する
井の頭池を眺めて祓川室長が呟く。
「さて、どうするかだな。池の水を排水するとそれに混じって下流に行くかもしれない。早くしないと水が溢れる」
宗形が答える。
「水は龍愛がなんとかするって言っていたよ。あとはみんなでやればいいって。なんでも炎出ろと強く思って武器を振ると高温の炎を纏うんだってさ。凍れと強く思うと氷の刃になるって。それで初穂料なんだけどどうする、国家公務員さん。今回おまけ価格でこの池全部で一億円でいいわ」
「わかった」
「それから龍愛から預かって来たんだけど、唐獅子牡丹さんにはこれ」
宗形が日本刀を投げる。唐獅子牡丹が受け取って鯉口を切ってすらりと抜く。じっと見ると刀身から炎が吹き出して来た。
「かたじけない」
「さすが唐獅子。銃オタにはこれ」
20式5.56mm小銃に見えるものを渡した。
銃オタおばさんは受け取って池に向かって連射した。炎を引いて弾丸が飛んで行った。
「さすが銃オタ。よくわかっている。皆殺し愛子さんにはこれ」
SFP9 Mに見えるものを渡す。
皆殺し愛子も池に向かって撃った。炎を引いて弾丸が飛んで行く。
「みんなの武器には龍愛のドラゴンマークが入っている。それの性能を引き出すのには訓練がいるけどやる?」
「「「もちろんお願いします」」」
「それじゃ訓練しましょう」
エスポーサと龍愛がブランコに乗ってやって来た。
「はい。こんにちは。では10分ほど訓練して来ましょう。訓練中はここと時間の流れが違います。ここ10分、訓練は10日ほどです」
銃オタと皆殺し愛子と唐獅子牡丹がエスポーサ達と消えた。宗形も一緒に消えた。
山城稲荷神社の階段下に転移した。
「みなさんは普通人と違いかなり訓練されているようです。ここは山城稲荷神社の階段下です。ご存知のように山城稲荷神社には龍愛が住んでいます。ではまず階段を登ってもらいましょう。まずは水を飲んでください」
エスポーサが説明して、エスポーサの手元にコップが乗ったお盆が出現した。各自飲んだ。美味しい水であった。
「武器は預かっておきましょう。ではまた途中で待っています」
武器を預け、階段の上を見るとすぐ登り切れそうだ。エスポーサたちが消えた。
「よし、行くか」
唐獅子が声をかけた。
「おう」
三人とも体力には自信がある。そうでなくては好きな武器が扱えない。武器を自在に扱いたい、ただその一点で日頃鍛錬しているかなり危ないおばさん連中なのであった。
階段を駆け上がり始める。2匹の子犬がどこからか現れ一緒に登っていく。5分たった。登り切れない。階段はずっと上まで続いている。下を見ると確かに登った。随分下にさっきの階段下が見える。
「これはなかなか」
皆殺しがつぶやく。
「一日コースか」
銃オタが応える。察しのいいエリートたちであった。
二時間ほど駆け上がったらエスポーサがブランコといた。
「はい。お疲れ様です。水をどうぞ。登りだけではつまらないですね。今度は降りましょう。何段か飛んで降りてもいいですよ。降りたら登って来てください。それではまた」
エスポーサたちが消える。子犬も消えた。目の前の階段は下りになった。
「「「面白え」」」
三人は嬉々として階段を駆け降りるのであった。
二時間、階段の上り下りをしたらエスポーサが水を供給してくれる。時々子犬が来る。遊びだろう。5セット、10時間であった。
今いるのは階段上の鳥居のところである。境内にエスポーサが待っている。一礼して鳥居を潜って境内に入った。
「はい。ご苦労様でした。では引き続き頑張りましょう。トイレも必要ありませんでしたね。みんなエネルギーに回ったようですね。神社にお参りしてすぐ出発です」
神社にお参りした。
「では行きます。奥社コースです」
神社の脇を通って山道に。段々暗くなる山道をかける。いつまでたっても奥社につかない。アップダウンもある。そのうち真っ暗になった。夜通しかける。
明け方になった。霧の中に突っ込む。広い草原に出た。
「みなさん。ようこそ。基礎体力編は終了、これから実践編です。その前に、僕がシンです。隣がアカ、アーダ。マリアさん、エスポーサにブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ローコーさん、エリザベスさん、ゴードンさん、宗形さん。交代で娘のジェナとその友達のチルドレン、熱帯号、雪原号、警備員が参加。エスポーサが監督です。それにみなさんの神、龍愛、黒龍、黄龍です。みんなにも紹介しておきましょう。姫乃愛子さん、二つ名は皆殺し愛子、同様に常陸若子さん、銃オタ、高倉武子さん、唐獅子牡丹です。それとご存知の宗形薫さん。私の世界は基本は刃物です。銃器、矢などでは歯がたちません。ただし姫乃さん、日立さんに渡した拳銃、小銃の銃弾は異形を貫通できます。ですが異形は心臓に当たるものがなく一発で殺すのは難しいです。姫乃さん、常陸さんはご希望がありますか。薙刀、日本刀、棒などあります。棒は練習すれば切れます。宗形さんが得意です」
「薙刀をお願いします」
「棒をお願いします」
姫乃が薙刀、常陸が棒となった。二人に渡す。
「ではエスポーサ、よろしく。食事は差し入れます。簡易トイレは出しておきます。そうそう。最後の一日は水棲魔物の対策をしましょう」
簡易トイレを出した。10日間寝ずにやればかなり上達するだろう。リンとプリシラさんに差し入れしてもらう。エスポーサ特製の水やお茶付き弁当だ。
訓練はこの前祓川さんたちにやった訓練と同じ。
切られ、鞭の餌食になり、殴られたり、火球や氷の攻撃にさらされたり、牙にかけられ、追いかけられて必死に逃げる。
ドラちゃんに乗って空から落とされる。仕上げは滅びの草原の魔物の相手、最後にティランママとティランサンに滅多切りにされ、エスポーサが治療して陸上訓練は一通り終わり。
最後は水棲魔物相手に訓練だ。
ルーシー ハント、荒木田剛、江梨子、円、舞、大井、榊原強、勝、稲本利夫、和子、祓川崇、塩井阿闍梨も追加で呼んだ。
「ではみなさんお揃いですね。みなさんの星に水棲の異形が確認されましたので、これから水棲魔物相手の訓練をしましょう。この訓練が終わればみなさんの星の水棲異形など簡単に対応できます。ついでですから少し日程を延長して、熱帯、雪原、溶岩地帯の経験もしておきましょう。姫乃さん、常陸さん、高倉さんは今のままだと死にますので、ご希望があれば龍愛の眷属になってもらいます。どうでしょうか」
死ぬか、眷属か、逃げるかである。選択の余地がない。
「「「お願いします」」」
三人に龍愛がバングルをしてやる。三人の体が光る。
「みんなは龍愛の眷属だよ。一緒に生きよう」
「はい」
三人をはじめとして龍愛の眷属みんなが龍愛に礼をした。
宗形は気がついた。
一緒に生きる?もしかしてもしかするのではないか。
秡川と塩井阿闍梨を見ると驚愕の表情だ。気がついたらしい。
稲本夫妻、勝婆さん、ルーシーも気がついたようだ。こちらは驚かない。推論でなくわかっていたのであろう。さすが神主夫妻と婆さん巫女、体を育ててもらったルーシーである。
他ののほほん連中には黙っていよう。
「ではエスポーサと行ってもらいます。狐面がない人は差し上げます。かぶれば水中の中、砂嵐の中、毒ガスの中、溶岩の中でも楽に呼吸ができます。他人が外そうと思っても外れませんが自分では簡単に外せます。三人には忍者服を進呈します。着替えて行ってらっしゃい」
エスポーサが狐面を被ったみんなを率いて行った。二日かかって戻って来た。
「お疲れ様です。だいぶお楽しみのようでしたね。まずはお風呂に入ってください」
移動用スパ棟を出す。ジャグジーなどでリラックスしてもらおう。一時間くらいしてみんな出てきた。
「みなさん、お疲れ様でした。異形は随分繁殖してしまったようですが、訓練と比べれば楽と思います。龍愛と共に頑張りましょう。ではまたいつかお会いしましょう」
シン様たちが転移していく。




