007 ショッピングモール (下)
女性陣の足が止まった。化粧品のコーナーだ。
カモと見て店員が寄ってくる。
エリザベスを捕まえた。
「お年を召されると肌が手入れを要するようになってきます。お客様の肌は・・・・素晴らしい」
落ち込む店員。
一番若そうなアヤメを捕まえた。
「若い方は、若さにかまけて手入れをしていないと荒れてしまいます。お客様の肌は・・・・素晴らしい」
正直な店員である。
エリザベスさんが店員に
「なかなかいいわ。容器が。参考になるわね」
「容器、でしょうか」
「色とりどりでデザインもいいわ。容器の材質は大したことはない」
「中身も大したことはないわ」
エスポーサ魔女の分析だ。
年嵩の人の肌も素晴らしい。若い人の肌も素晴らしい。言い返せない店員であった。
「そのパンフレットをもらいましょう。おいくら?」
「どうぞ。差し上げます」
各種パンフレットをもらって去っていく女性たちの均整のとれた後ろ姿に店員はため息をついた。
マリアとリン
「これは何かしら」
コーヒー豆の前で立ち止まる。
田舎者め、という気持ちを笑顔に隠して店長が教える。
「インスタントコーヒーしかお飲みでないのでしょう。これはコーヒー豆を乾燥して、焙煎してあり、挽いて使います」
「へえ、そう。コーヒーは飲んだ事はないわ」
ど田舎者め、売りつけてやろうと思った。
「どうぞ飲んでみてください」
豆を挽いて二人にコーヒーを出してやる。
「へえ。苦いわね」
「もしかすると癖になるかもしれません」
「そうねえ」
「産地、炒り方によって味が変わります。また砂糖を入れてもいいしミルクを入れてもいいです。この本に書いてあります」
田舎者に売りつけてやろうと各種の本、豆も産地の違うもの、焙煎の程度の違うものを勧める。
「どこに生えているの?」
「熱帯、亜熱帯地方ですがそんなに高い気温のところではありません」
「なるほど。ジュビアに聞いてみよう」
ジュビアがエリザベスとやって来た。
『これコーヒーというのだそうだけど知っている?』
ジュビアがじっと見る。
『赤い実の種だ。たくさん森の外れに生えている。だけどこれは焦げているみたいだ。もとの色は淡い緑色で、匂いも青っぽいだけで不味い』
「店員さん。こちらの方は商会の方で、すみませんがコーヒーを淹れてくれませんか」
何語を喋っているのか全くわからないが、貧乏国の小店の女主人なのだろう。買い付けか、儲かると思った店主。すぐコーヒーを淹れた。
『エリザベスさん、どう?』
『苦いけど、売れそうだね。ジュビアのところに豆があるなら原価はタダに近い。儲かりそう。見本を買っていこう』
『解説した本もあるそうよ』
パラパラと本を見たエスポーサ。
『乾燥、焙煎はちょいちょいね。轢くのもちょいちょい、インスタントの粉も簡単につくれるけど、もったいつけてその機械を売りつけて豆のまま高値で売りつけるのがいいかも』
「店主さん、本を各種。コーヒー豆各種、それからその豆を轢く機械を一つもらいます」
儲かると思った店主、豆は多めに、本も各種あるだけ売りつけた。
エリザベスから黒いカードを出されて、この田舎者め、黒いカードなど見た事はない、ど田舎カードだろう、使えるのかと思ったらすんなり使えた。
女性たちが荷物を持って店を出た。
店員があわあわ言っている。
「店長。あれはブラックカードです」
「なんだ。それは」
「超最上級グレードのクレジットカードです」
「なんだと。田舎者だろうが」
「田舎者かどうか知りませんが、カード会社の超上得意様ではないでしょうか。あのカードで家でもなんでも買えそうです」
「・・・知らなかった」
シンとアカ、お狐さん、アーダ
お狐さんはまだ僕のバリアの中だ。出てこないね。バリアがお狐さんを支えてくれるから僕は手が空いて楽だからいいけど。アーダは僕とお狐さんの間に入って熟睡中。
「おとたん。飽きた」
ジェナとチルドレン、アイスマンとジュビアが帰ってきた。
「そうか。もうすぐお昼だよ。みんなが帰ってきたらお昼にしようね」
「うん」
次々に帰ってきて全員揃った。
では食事に行こう。みんな肉だろうね。ステーキだな。
ステーキ屋さんに入る。ブランド牛だ。だいぶお値段が。
まあいいや。
焼いて食べ始める。
「おとたん。魔肉のほうが美味しい。それに量が少ない」
みなさんも同意見のようだ。
「この国ではこれが一番美味しい肉だよ。神社に帰って魔肉を焼こう」
「ところでシン様。宝くじのスクラッチが5千万と3千万の計8千万円当たったのですが、引き換えてご利用ください。それと、ジャンボ宝くじ連番2組、前後賞合わせて20億円です。ミニが2枚1億円です。まだ抽選していませんが当たりそうです。これも使ってください」
「そうかい。預かっておこう」
食事が終わって、アエオンモールを出て人気のないところから神社に転移。
お狐さんとアーダを保護していたバリアを消す。
「お狐さん神社に戻ったよ」
お狐さんがピョンと飛び降りた。神社の境内に戻って安心したようだ。アーダも起きた。
「稲本さんの家の裏庭でバーベキューをしよう。肉が足りなかったみたいだから魔物の肉を焼くよ」
石で台を作って鉄板を置いて火をたいて魔肉を焼く。
ジェナたちが待ち切れないみたいだ。でも魔肉はよく焼かなくてはね。野菜も焼く。
「ほい、焼けた」
ジェナとチルドレンが最初。龍愛も手を出す。いいけど。次々に焼く。
ブランド牛より魔肉のほうが美味しいみたいだ。
「野菜も食べるんだよ」
お狐さんには木の実と山菜を出してやる。アーダはみんなに少しづつもらっている。
稲本さん夫妻にも食べてもらう。
「これは美味しい。牛より美味しい」
稲本さんの感想です。
「たくさんありますからどんどん食べてください」
昼食が終わって、みんなは僕らの星に帰るというので見送った。