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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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064 MI6氏は宗形薫医師を調べに山城稲荷神社に行く

 MI6氏は地図を片手に観光気分で山城稲荷神社の階段下までたどり着いた。階段は上まで続いている。


「どれ、俺の脚力を見せてやろう」

 誰も見ていないのに声を出して、駆け上り始めた。調子良く登る。さらに登る。いつまで登っても上に着かない。これは富士登山か。ならばゆっくり登ろう。勝手に理屈を付けて歩き出した。


 カラスが、カー、カーと鳴いている。たしか日本語でアホー、アホーと鳴いていると教わった。あまり品の良い言葉ではなかったな。俺は英国紳士だから品の悪い言葉はわからない。


 もう着くだろう。着かない。下を見る。信じられない光景が広がっていた。


 なんと10段くらい登っただけであった。どっと疲れが出たMI6氏。


 こういう山は裏に道路が入っているものだと、少し歩いて車の通行がある道に出た。タクシーをつかまえた。


「ヤマシロイナリジンジャマデ オネガイスル」

 運転手は怪訝な顔をしたが、MI6氏を乗せて走り出した。階段から降りてきた道を走っていく。突き当たって止まった。ドアが開いた。なんとさっきの階段下であった。

 運転手が手をだす。お金か。俺は紳士だ。払おう。


 階段から老夫婦が降りてくる。なんだ、降りてくるのなら登れるだろうともう一度登り始める。


 今度は慎重に一段一段登って後ろを振り返る。ちゃんとのぼれている。気をよくして少し急いで登った。後ろを振り返る。おお、登れた。それならばと走って登った。後ろを振り返る。10段登った。なんでだよと思うMI6氏。


 脇を中学生らしいのが集団で、ファイトとか言いながら駆け足で階段を登っていく。しばらくすると降りてきた。


 MI6氏、やっぱり行けるではないかと階段を登り始める。しばらく登って振り返ると10段目だ。さっきの中学生らしいのが不審な顔をして脇を登っていき、そして降りてきた。まだいるという顔をしている。


 サイレンの音が聞こえる。日本のパトカーだ。階段下に止まった。警官がこちらにかけてくる。案内してくれるのか。日本の官憲には連絡していないが。


「そこの外人、身分を証明するものを持っているか?」

 MI6たるもの、偽造身分証明書などいくつも持っている。出してやろう。あれ、ない。どうしたことだ。何もない。財布もない。あ、タクシーの中に落としてしまった。


「怪しい外人だ。署まできてもらおう」

 MI6氏は連行されてしまった。


 警察署はこの間大失態をしたところである。署長は辞表を出して、すぐ受理されてしまった。署員も懲戒処分された者多数。後任の署長は決まらない。どうやら敬遠されているらしい。署員の意気は上がらない。

 不審者を捕まえて、これでいくらか成績になるかとみんなして怪しい外人を取り囲んだ。


 そのうち外人が落としたとタクシー運転手が財布を届けてくれた。

 取り調室の外人を確認させるとその男が落としたというので財布を受け取った。


 財布の中身を確認すると、石鹸ランドのお得意様割引券が出てくる、キャバレーの請求書が出てくる、なんとか興行の領収書が出てくる。怪しげなメンズエステの名刺が出てくる。お盛んである。


 身分証明書がいくつも出てくる。顔写真は人物は同じだが髪型や髭があったりなかったり名前も違ったりした。不良外人、犯罪者と決した。


 一番まともそうな身分証明書を持って、男に手錠をかけて、総合病院に行った。


 この地方都市で使える英語が話せるのは総合病院の一部の医者である。行ってみたがあいにく荒木田、榊原、宗形医師はいなかった。しょうがない。病院長に頼んだ。


 病院長は問題児の荒木田、榊原、宗形が退職したのでご機嫌である。すぐ引き受けてくれた。


「何々、英国の外務省の職員だと。へえ。電話するが料金は警察持ちだぞ」

「わかりました」

 手柄だと思ってワクワクする警官。顔色が悪い不良外人。


 電話に相手がすぐ出た。時差があるのにさすが外務省と病院長は思った。

「こちらは日本国の武蔵西南警察署の通訳を頼まれた者だが、偽造身分証明書をたくさん持っている男を確保した。その証明書の中に英国外務省の身分証明書があった。念の為確認であるが、ジョン ドロン(MI6)というのはそちらの職員にいるか?」

「少しお待ちください」


 いた。日本国駐在のMI6の馬鹿だ。カモフラージュに外務省の職員ということにしたのに、MI6などと書き込んでしまった。何を考えている。困った。田舎警察に捕まったとなると大恥だ。惚けることにした。


「ドロンジョなどはいない」

「いや、ジョン ドロンだ」

「いない。当省にそのようなものはいない」

「そうですか。わかりました」


 病院長は、派閥、権力、欲望の海を泳ぎ切って病院長になっただけあって、察しが良い。

 こいつはおかしい。騒動のすぐ後でタイミングが良すぎる。間抜けなMI6氏が調査に来てドジを踏んで本国に見捨てられたのだと推測した。

 宗形がいれば猫が捕まえたネズミを前足でちょいちょいとからかうようにして楽しむだろうが、残念だ。まあ俺にはそういう趣味はない。

 待てよ、英国大使館に貸を作っておくのもいいな。


「この男は、英国外務省は知らないと言っているがどうする。引き取ってくれそうなところを探そうか」

 無国籍者は面倒だと思った警官、病院長に頼んだ。


 病院長は英国大使館に電話した。もちろん英語である。署員はちんぷんかんぷん。外人は真っ青。

 病院長は長電話をして、最後にニヤッと笑って電話を切った。


「英国大使館は、その男は英国人で低能の馬鹿で不良外人であるから引き取りに来ると言っている。豚箱にぶち込んどけばいい。明日あたり警察署に引き取りに来るだろう」


「先生、ありがとうございました。犯罪者でしたか。助かりました」

 署員は大威張りで犯罪者をしょっぴいていった。


「ふふふふ。警察に貸ひとつだ。それとだれか英国の奨学金付きで一年間英国留学に行かせてやろう」


 日本の田舎警察にMI6がつかまるという大失態を、英国人の不良外人が田舎警察に捕まって英国大使館が引き取ったということに出来た英国大使館。医師の奨学金留学一人一年間くらい安いものだと思った。石鹸ランドのお得意様割引券が表に出なくてよかったとホッとした。

 そして不良外人は本国強制送還である。

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