057 シンとアカ ルーシーにかかった呪いを浄化する
父親はルーシーと話して、
「じゃあ、シン様とやらに会ってこよう。ゆっくり休んでいなさい」
応接室に行くと大人が三人と子供が一人いた。シン様たちだろう。
三人が立ち上がった。背は俺より高い。180は優に超えている。女性も一人は180を超え、もう一人は少し小さいが180が少し欠けるくらいだ。
「シンと申します。お邪魔しています」
「よくおいでくださいました。ルーシーの父です」
「アカと申します」
「宗形薫です。医師です」
「こちらが龍愛です。初期の治療を行いました」
「龍愛だよ。蝕まれた体は治した。黒いモヤモヤは纏めた。あとはお兄ちゃんとお姉ちゃんでなければ対処できない」
「私がひと足先に診察させていただきました。検査をしてみないとわかりませんが医学的には正常と思います」
「日本の医師ですか?」
「そうです。GMCに登録してあり、診療可能です。いろいろ試験があり手続きは面倒でしたが」
「それはそれは」
後で調べさせよう。本当にGMCに登録してあれば優秀だろう。
しかし三人とも美形だ。小さな子供もそれなりに美形だ。面食いのうちの奥さんが受け入れるわけだ。しかし女性は綺麗だ。アカと言ったか。この世のものではないような美しさだ。いかんいかん。奥さんが睨んでいる。
「よければルーシーさんを診てみましょう」
「お願いする」
ルーシーの部屋に揃って入った。
「アカと言います。舞の友達です。治して元気になろうね。横になってごらん」
ルーシーが横になる。
「この辺ね。龍愛がよく纏めてくれてある。助かるわ」
龍愛が嬉しそうだ。
アカが肩の辺りに手をやる。黒いモヤモヤしたものが出てくる。アカがそれを握って引き抜いた。
すかさず僕が球体のバリアを作り閉じ込める。丸い球体の中にモヤモヤした黒いものが渦巻いている。
「ふうん。怨念、呪いの類だね。消えずに代々子孫に乗り移って存在し続けたのか。怨念も後悔しているな。でも自分ではどうすることもできなかったか。もう十分だろう。天に還りな」
球体の中の黒い渦巻きが白くなって人の形をとった。女性のようだ。
シンとアカに向かって胸の前に手を組んで膝をついて首を垂れた。体が薄れて行って光になった。
シンがバリアを消すと天に昇って行った。謝罪と感謝と歓喜の気持ちが部屋にいた人たちに伝わってきた。
「龍愛おいで」
アカが龍愛の手を取ってルーシーにかざす。みるみるうちに体が回復していった。蝕まれて伸びていなかった背も伸びた。平だったところも膨らんだ。
両親は、肩を確認した。死を主張する黒い蝶の痣はなくなっていた。
二人は天に登った女性のようにシンとアカに向かって膝をついて手を組み首を垂れた。まるで神の前にいるような格好だ。
「怨念、呪いのようなものでした。祖先のなかに一族に恨みを持った女性がいて、一族に祟ったのでしょう。女性を18歳になった時に呪い殺し、次の幼子へと乗り移り、呪い続けましたが途中から後悔したようです。ただ発動してしまった呪いを自分からはどうすることも出来ず、呪いが存続し続けたようです。呪いは浄化し魂は天に還りましたので、これから一族に黒い蝶の痣が出ることはない。ご安心ください。ルーシーさんは明後日で18歳になり亡くなる予定でしたね。ルーシーさんが18歳の誕生日を無事に超えることでこの呪いがなくなったことが一族のみなさんに証明されるでしょう」
「どうぞお立ちください。ルーシーさんも背が伸びて女性らしくなりましたよ。見てあげてください」
母親が立ち上がり、自分とほぼ同じ背丈になったルーシーを抱いて涙した。
「よかった。黒いモヤモヤが浄化されて天に登って行った。もう一族で死ぬ人はいない。本当に良かった」
父親も立ち上がり目に涙を滲ませた。
「これで一族の呪いがなくなった。ルーシーの18歳の誕生日を過ぎたら一族を集めパーティーをして呪いがなくなったことを確認し、祝おう。一族の慶事だ。シン様、アカ様、リューア様は一族の恩人だ。三人を連れてきてくれたマイさんも一族の恩人だ。何かあれば我々一族が駆けつけ命を賭して事にあたることを誓う」
「気にしないでください。舞さんの友達を見舞っただけです」
「いや、あの呪いはこれからも存続し続けた。18歳で女性が一人死に続ける運命だった。その死ぬ運命がなくなったのだ。感謝してもしきれない」
奥さんもルーシーさんも頷いている。
「パーティーは、ルーシーの社会へのデビューでもあるので、友達のマイさん、恩人のシン様、アカ様、リューア様にはぜひ出席願いたい。また宗形様も当日は出席いただき、ルーシーの主治医として見守ってほしい」
いつの間にか主治医になってしまった宗形である。
ルーシーの18歳の誕生日まで滞在することにした一行。ルーシーのトレーニングをしていた。
龍愛が最初少し回復させ、呪いを浄化した後、アカと龍愛が回復と成長をさせたので人外になってしまった。親には内緒だけど。力の使い方を教えている。
バトルホースにも乗せた。舞と一緒に走っている。生まれた時からこの方、馬には乗れなかったので高い、高いとはしゃいでいる。




