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054 VR中の舞の友達が病気で危ないとメールが来る

 舞が学園から帰るとメールが届いた。

 VRの仮想空間の中の友達と思っていた貴族の友達の母親からだった。現実のスマホに届いた。


「マイには詳しく話していなかったが、ルーシーは小さい時から原因不明の難病で館から出られず、体の成長も同じ年の子と違ってしまって、友達はこの頃毎日来てくれたマイのみであった。マイが見えないここ数日で症状が進んで、危ない状態となってしまった。是非もう一度マイに会いたいと言っている。来てくれないか」

 とのメールであった。


 あれ、なんで。VRの中のことだったはず。現実世界のgafaメールサービスのアドレスのメールが来た。現実?と舞。


 すぐ神社に向かった。階段を駆け上った。

 階段の上まで登ると宗形さんが境内の掃除をしていた。巫女服で本当の巫女さんが奉仕しているようである。


「神さんは?」

「どうしたの。顔色が悪いわね。神さんに相談?稲本さんの家にいるわ」

「ありがとう」


 異形ではないわね。なんだろうと興味津々の宗形である。

 宗形の箒にじゃれついたり、掃き集められた落ち葉に潜ってみたりして掃除を邪魔していた黒龍と黄龍が舞と一緒に背中に巻き上げた尾を振りながら自宅に走って行く。


「あの子達一向に大きくならないわ」

 揺れ動く尻尾を見ながら宗形は呟いた。


 舞が引き戸を開けると龍愛が迎えてくれた。

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは応接間だよ」


 この頃汚れ飛んでけを覚えた黒龍と黄龍。龍愛の後をついて舞と一緒に応接間へ。

 神と朱は応接間で稲本夫妻とお茶を飲んでいた。


「神さん、VRの中の友達のルーシーのお母さんからメールがあって、友達が難病で危ないんだって」


「VRは現実だよ。よくわかる例を一つあげよう。トイレは友達の家のトイレを借りたろう。こちらの家のトイレは使ってないはずだ」

「あ、そうだった。気づかなかった」

「時差はうまく調整している」


「それじゃ本当に難病で危ないんだ。どうしよう

「VRが選んだのも何かの縁だ。そうだな。龍愛に行ってもらおう」


「龍愛、病気を治した事ない」

「治れ、治れと思えばいい。やればできるよ。病気でなかったら呼んでね」


 舞と龍愛が転移して行った。この頃進境著しい龍愛、親神様に転移を解禁してもらったのである。


 友達の家はスコットランドの田舎にある。病気の娘の療養のために建てた小さな館だ。近くの街に転移。タクシーに乗って行く。


 いつも通り玄関で使用人が迎えてくれ、すぐルーシーの部屋に案内してくれた。


 部屋には母親がいてルーシーについていた。母親はいつもはややふっくらしているがやつれたようだ。目の下にクマがある。看病していたのであろう。


「ありがとう」と目で挨拶されて口から出た言葉は、

「舞。お久しぶり。あら、そちらの小さな方は?」

「こんにちは。少し用があってご無沙汰していました。用が終わったので遊びに来ました。こちらは友達の子の龍愛です」


「お初にお目にかかります。龍愛と申します」

「小さな淑女ね。ゆっくりしていって」


 母親はルーシーの視界から外れたところで頼むと仕草をして部屋から出て行った。


「ルーシー、ごめんね。しばらく来られなかった」

「うん。来てくれて嬉しい」

 体を起こそうとする。


「具合が悪いの?寝てていいよ」

「ごめんね。もうだめそう。あと5日で18歳になる。18歳を迎えたら死ぬ。それが運命。最後の数日は意識がなくなる。意識がなくなる前にマイに会えてよかった」

 苦しそうに声を絞り出した。


 舞はルーシーの手を握ってやった。

 龍愛が小さな手を重ねる。

「治れ、治れ」


 龍愛から出た光がルーシーを包み部屋に満ち、だんだんルーシーの顔色が良くなり、痩せ衰えた頬も張りを取り戻して来た。


 母親がルーシーの部屋が壁ごと輝いているのでびっくりしてドアを開けた。小さな子から光が出てルーシーを覆っているのを見た。思わず膝をついて祈った。


「これ以上あたしには無理。原因が取り除けない。お兄ちゃんとお姉ちゃんを呼んで」


 龍愛がコテンと倒れかかった。舞が支えた。

「すみません。龍愛にはここまでのようです」


 母親がルーシーを見ると健康そうな顔色で痩せ衰えた顔もいくらか肉がついたようだ。すやすやと健康的な寝息をたてて眠っている。

「奇跡だわ」


「原因が取り除けないようです。龍愛のお兄さんとお姉さんを呼んで良いでしょうか」

「勿論、お願いします」


 スマホを取り出した舞。あれ、神さんはスマホを使っていたっけと思ってどうしようとスマホの画面を見ていたら、勝手に電話がかかった。


「はい。シンです」

「神さん、龍愛が治療したのだけど、原因が取り除けないって。神さんと朱さんを呼んでって言って倒れてしまった」

「ルーシーさんと親御さんが良ければ行きますよ」


「勿論お願いします」

 舞の隣にいた母親が頼んだ。あれ神さんが英語を話している。私も英語で話していたのか。だいぶ上達した舞であった。


「わかりました。行ってみます。明日伺います。龍愛は力を使ったので回復のため寝ています。寝かせておいてください。大丈夫です。すぐ回復します」

 電話は切れた。

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