051 秡川を除き全員揃って夕練に参加する
「みなさん、ご存知の方も多いと思いますが、夕練から仲間に入ってくれた、荒木田剛さんと榊原強さんです。秡川さんを除き全員揃いましたので紹介しておきましょう」
「まずは荒木田さんご一家、剛さんと江梨子さんご夫婦、武蔵西南学園の教師で長女の円さん、同じく学園の高三、次女の舞さんです。それから榊原強さん、祖母で巫女の勝さん。学園の教師大井明日香さん、稲荷神社の巫女さんにして医師の宗形薫さん。稲荷神社の神主の稲本利夫さん、奥さんの和子さん。僕は樹乃神。樹乃朱、樹乃龍姫、樹乃龍華、樹乃龍愛です。ほかに今日手伝いに来てくれているのがエスポーサです。ではみなさん、ときが迫っています。間に合うように頑張りましょう。ではエスポーサ、お願いします」
「エスポーサと申します。残されたときは少ない。急ぎましょう。宗形さん、稲本さん夫妻、荒木田夫人、円さん、勝さんはこれから奥社コースです。暗くなりますから気をつけましょう。龍姫、龍華、龍愛のドラゴンシスターズが案内します。ではどうぞ」
すっかり諦めたらしい宗形。龍姫、龍愛、稲本夫妻、荒木田夫人、勝さん、円さん、宗形、龍華の順に走って行った。
「残りの皆さんは階段コースです。2時間頑張りましょう」
朝練組を先頭に階段を駆け降りていく。
「おい。まだいくらか見えるが暗くなるだろう。どうするんだ」
「さあ。わからん。これも仕事だからやるよりしょうがない」
階段を下まで降りてヒーヒー言いながら登ってくる荒木田と榊原。朝練組はさほどこたえないらしい。階段を上り切ったところで、シルバーの髪色をした若奥様風ではあるが何やら怖いエスポーサさんがパラソルの下に陣取って、水を出してくれる。大きな白い犬がそばで伏せをしている。水は飲むと心持体が軽くなる。奥社組は階段組上り下り数回につき一回帰ってくるようだ。その日は8時までやった。暗くなったが不思議と足元に困らなかった。
「みなさんお疲れ様です。汚れ飛んでけ」
いい加減なことを言うと荒木田と榊原は思ったが汗が引いた。服がさっぱりした。髪の毛がサラサラであった。
「それでは荒木田さんと榊原さんは明日の朝練に秡川さんを連れてきてください。ではまた明日」
階段を降りるのは荒木田一家、大井先生、榊原強である。
「おい荒木田、なんで秡川室長のことを知っているんだ」
「わからん。でも連れて行かないとまずいみたいだな」
「今日はどこに泊まっているのか」
「聞いてない」
「電話するか」
「お前が電話しろ」
「今度はお前の番だろう」
「いや、お前だ」
「おかあさん、お父さんと榊原さんはいつもああなの」
「いつもああね。ほっとけばいいのよ。それよりもお化粧が崩れなかったかしら」
「どうでもいいんじゃない。暗くて見えないから」
「あれ、階段が見えた」
「言われてみればこの前も見えた」
周りを見渡すと、大井先生とお姉ちゃんが話しているのが見える。昼間のように。
お父さんがスマホで電話しているのがはっきり見える。よく考えたら非常におかしい。
「ええええ」
「はい。荒木田です。夕練の帰りです。しんという高校生風の男から、明日の朝練に室長を連れてこいと言われました。はい。ええと。ときが迫っています。祓川さんも来たほうがいいですよと言っていました。はい。それじゃ日の出に階段下に集合ということで。わかりました。おやすみなさい」
「おい電話したぞ」
「ご苦労さん。それじゃあな」
参道の横道のところで別れた。大井先生は榊原が送っていくようである。
荒木田から電話を受けた秡川。
ときがせまっているだと。高校生風の男が何か知っているようだな。学園前を通った時、一瞬男と目があった。何をみられたかわからないがみられた気がした。あの男かもしれない。
明日朝わかるか。
稲本さんの家。合宿所になってしまった。
夕飯はマリアさんが作ってくれていた。
「さあ、みなさん夕食にしましょう」
マリアさん、エスポーサ、ブランコ、ジェナ、チルドレンが加わって賑やかだ。
夕食が終わって、「おやすみなの」、龍愛が逃げようとする。
「ダメです。昨日の続き」
ドラちゃんとドラニちゃんが二階に拉致して行った。大学入試問題をやっているらしい。体力も急速についてきたし、やればできる子だ。頑張れ。




