005 ショッピングモール (上)
ジェナ、チルドレン、アイスマン、ジュビア
「あっちでいい匂いがする。行くよ」
「おー」
たこ焼きを見つけた。みんなで一皿づつ買った。
フードコートの席はまだ時間が早いので空いていた。みんなで座って食べる。
「串焼きないね」
「ないない」
「聞いてきましょうか?」
「いいよ。これでおやつは十分。お昼はおとたんと一緒に食べるから」
「はい、わかりました」
すぐ食べ終わってしまったジェナたち。
「次行くよ。魚の形のたい焼き」
一つづつ買って再びテーブルへ。
「あれ、あまーい」
「おさかなじゃないね。お菓子だった」
「うん、甘い。美味しい。あんこにクリームというのがあるよ。これはあんこだ。クリーム行ってみよう」
またまた買うジェナたち。
「これも甘い。美味しい」
ジェナたちのおやつは十分。
「次行くよ」
フードコートを出てあちこち回る。だんだん飽きてきた。
「おとたんとこに戻ろう」
ドラちゃん、ドラニちゃん、龍愛
「ううーん。あまりおもしろくないな」
「龍愛、初めて」
「そっか。龍愛の星だから、はたから順に見ていこうか」
ドラちゃん、ドラニちゃん、龍愛で店を巡っていく。
宝飾店に来た。
「石がちっちゃい」
ダイヤモンドを使ったネックレスをみたドラちゃんの感想。50万円とか60万円とか値段が書いてある。
「お嬢ちゃん、これは最上等級の無色の1カラットのダイヤモンドだよ。何トンもの石のなかに一粒入っているかどうかだ」
「そうなの。こんな屑石、ごろごろあるよ」
「屑石ではありません。最高級品です」
「へえ。ほらこれ、屑石」
ジェナが一掴みケースの上に出す。
「こっちはもうちょっと大きい」
大人の拳大の石を出した。
「おもちゃか。ガラス玉だな」
相手していた店員の他にもう一人やってきた。
「手に取ってもよろしいですか?」
「いいよ」
手袋をしてジェナの言うところの屑石を手に取る。
「詳しく鑑定しないとわかりませんが本物のようです。素晴らしい」
「本物だよ」
「そちらも拝見してよろしいでしょうか」
「いいよ」
手に取って少し眺めて手が震えてきた。
「すぐしまってください」
「うん?」
「おそらく、世界最大級の最高品質のダイヤモンドです。値はつけられません。良いものを見せていただきました。ありがとうございました」
最初対応した店員がショーケースの上にドラちゃんが出した小粒の石をいくつか手のひらで押さえて素知らぬ顔をして、ショーケースの上から手をずらして石を掴んでズボンのポケットに入れた。
「おじさん。石は返してね」
「なんのことでしょうか」
「ズボンのポケットに三つ入れたよ」
「そんなことはありません。たくさんケースの上にありますね」
「いまなら出来心で許すけど、しらを切ると許さないよ」
「お子様がそんな口を聞いてはいけません」
「そう。わかった」
「では、交代の時間ですので失礼します」
「待ちなさい。ポケットを検める」
「店長、あなたは警察ではない。検める権限はない」
「そうか。それでは警察を呼ぶがいいか」
店員が走って逃げようとする。足がもつれて顔から床に叩きつけられた。グシャとかバキとか音がした。倒れた拍子にポケットからコロコロと3粒の石が転がり出た。
他の店員も集まってくる。
店長が石をひろってジェナに返した。
「申し訳ありませんでした。これはお返しします」
「うん。返された。その男は首の骨が折れたようだよ。そのままにしておいてお医者さんを呼んだら」
「そうします」
「じゃあね。龍愛、次行くよ」
幼児が出て行った。
「救急車を呼びましょう」
「店長、血が出ています」
鼻が潰れ口も歯が折れたようだ。
「布でもかけておいてください。首の骨が折れたのなら動かさないほうがいいでしょう」
倒れた男に店長が話しかける。
「宝飾を扱う店に一番大切なものは何か。お前にはわからないだろう。教えてやろう。信用だ。お前はこの店の信用を落とした。お客さんのご好意により警察沙汰にはしない。ただお前は首だ。今の行為はすべて防犯カメラに記録されている。労働組合も庇ってくれないだろう。家族には事務所に来てもらって、防犯カメラの映像を見てもらい説明しておく。救急車が来たらお前と私どもは無関係だ」
「それにしてもどこのお子さんでしょうか。外国の大富豪なのかもしれませんね。さっきの石は世界一のダイヤモンドと言われているカリナンダイヤモンドより品質、大きさともに上回っています。それを手に取って見ることができました。こんな幸せなことはありません」
「あれは本物でしょうか」
「はい。本物です。そう私は確信しています」
「本物を幼児が持っているものなのでしょうか」
「そういわれればそうですが。親の方はもっと大きなものをお持ちなのかもしれません。お客様の詮索はしないことです」
エチゼンヤ夫妻
ローコー夫妻が宝くじ売り場に行く。
「このスクラッチというのは何だ」
「それは削ってその場で当たり外れがわかります」
「そうか。それでは一枚くれ」
「私も一枚」
二人でゴシゴシ削る。
「当たったな」
「そうね。当たったわ」
「当たったがこれはどうすればいいのかな」
「拝見します。い、一等5000万円、と3000万円!」
「どうやって換金するのか」
「みずほ銀行で換金となります。こちらに詳しいことが書いてあります。お持ちください」
黄色い袋をくれた。
「あなた、5000万ね、私は3000万よ。少ないわね」
「実力だ」
「そのジャンボというのをください」
「連番でしょうか」
「連番とは何?」
「前後賞というのがあって、当選番号の前と後の番号も当たりとなります。前後賞合わせて10億円です。ミニが5000万円です」
「それじゃ連番3枚とミニ1枚」
「ワシも同じ。二人合わせて21億円だな」
「当たりますように」
何となく当たりそうに思えた売り場のお姉さんであった。
「宝くじはシン様に渡しておこう」
「そうね。私たちはこの国の人ではないから換金が面倒ね」
ステファニー、マリア、リン
「マリア、リン、一回りしよう」
「はい」
「随分店が多いね」
「そうですね。シン様は小さい店は無くなったとおっしゃっていました」
「こうやって店が集まっているモール?になっていると便利だけどモールはある程度広い商圏が必要だから、便利な足がないとダメね」
「車を使うのでしょう」
「車も資源を使う。この建物もそうだけど、資源を多く使っている。流通する商品も同じようなものがたくさんあるけど、それも資源を使う。資源浪費型社会ね。行き着くところまで行き着いたら転びそうね。高転びという言葉もあったわね。高転びしそう」
「早いうちに気がつけばいいのですが」
「気がつかないわね。走り出したらもう止められない」
「私たちはこうならないようにしましょう」
「そうだわね。人と魔物、獣、森、自然。うまく循環していけるといいわね」
明日から15時公開予定です。