043 荒木田夫人、円、舞 朝練に参加する
こちらは荒木田家の夕食
「お姉ちゃん、明日から朝練があるんだけど」
「そう」
「稲荷様であるんだけど」
「へえ」
「お姉ちゃんも是非にって。樹乃神様が。みんなで朝練するの。お姉ちゃんも来て」
「大学受験があるのに朝練なんてダメです。ね、あなた」
「あ、ああ」
「お姉ちゃんの同級生の宗形先生も一緒なの」
「宗形か。ああ、出てもいいぞ」
危ない危ないと診療科長。うっかり断れば災難が降りかかってきそうだ。
「お母さん、朱様が大学受験用の勉強も教えてくれるって。苦手な英語はVRヘッドセットを貸してくれた。それに榊原先生のお婆さんもいるの」
「さっきから神様、神様と言っているけど何?」
「同級生の神様」
「騙されているのよ。ね、あなた」
「う、う、そうとも言えない。円も行ってみていいんじゃないか」
宗形と榊原の婆さんが絡んでいるから危ない案件だ。機嫌を損ねないに限ると診療科長。
「何よあなた。わかりました。私が行って化けの皮を剥ぎます。明日何時から?」
「日の出に始まる」
「わかったわ。円、あんたも教師をやっているからいくらか人を見る目がついたでしょう。一緒にいくわよ」
うへと思った円だが、我が家の支配者の言うことには逆らえない。
「わかりました。行きます」
ほっとした診療科長である。これでどうなっても俺の責任はないとビールに手が伸びるのであった。
翌、日の出前、いさんで出る荒木田夫人。円と舞を引き連れている。
階段を上り切ると薄暗い中に数人いる。
「おはよう」
声をかけられた荒木田夫人。うっすらと日がさしてきた中に浮かび上がる長身のスラリとしているが力強さが滲み出ている若い男。少し甘いマスクに理知的な目、鼻筋通った神々しい顔で、ニコッと笑いかけられた。
あら、やだ。お化粧してこなかったと荒木田夫人。最初の意気込みはどこへやら。
「今日からうちの円と舞を鍛えていただきありがとうございます。私も参加していいでしょうか」
「もちろん。歓迎します。診療科長さんも時間があればどうぞ。夕練もやっていますので」
話が違うと円と舞。
「ではまず、基礎体力をつけましょう。ゆっくりで良いですから階段を登り下りしてください。先頭は龍姫と龍愛が務めます。宗形さん、円さん、舞さん、荒木田夫人、稲本さん夫妻、榊原さん、しんがりは龍華です」
「江梨子と申しますのよ。江梨子と呼んでくださいな」
思わず力が抜けてしまった円と舞であった。
舞は、少し疲れるがゆっくりなら大丈夫。と思ったが最初の一本はゆっくりだったが、二本目からはだんだん早くなった。
時々鳥居のところで見たことのあるでかい犬のそばで知らない女の人が水を飲ませてくれた。髪の毛はシルバーで若奥様風の顔だが、雰囲気が何やら怖い。ありがたく水を頂戴した。二時間休みなくやった。
「では朝練の方はまた夕練に参加してください。昼間はみなさんに水を供給したエスポーサが宗形さんと訓練をして待っています。子供も来るかもしれません。昼間は、榊原さん、稲本さんも参加しています。では朝練組は学校ですね。今日も一日頑張りましょう」
あれ、昼間参加になってしまったと、榊原の婆さんと稲本であった。
「汗をかきましたね。さっぱりさせてあげましょう。汚れ飛んでけ」
神様がいい加減なことを言うと思ったが汗が引いた。服がさっぱりした。髪の毛がサラサラであった。わからないが時短になると朝練組は帰って行った。
「さて僕たちは学校に行きます。あとはよろしく」
いつの間に着替えたのか、シン様とアカ様が手を繋いで、ドラゴンシスターズがランドセルを背負って階段から降りて行った。