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039 ハビエル神父荒稼ぎをする & 龍愛、マネーロンダリングする

 使っても金額が減らない神社の通帳があるみたいだから、宗形さんが神社の専任になっても給料はそこからでいいし、僕らの活動費も神社持ちだけど、多少自由になるこの星のお金があったほうがいいな。


 ハビエル神父とトルネードに稼いでもらおう。まずアラブあたりで競馬だな。


 ハビエル神父とトルネードを呼んだ。観察ちゃんが連れて来てくれた。

「この星にまだ少し滞在するようなので、この国の通貨があった方がいいので稼いでもらいたい。まずはサウジとドバイあたりの競馬場でトルネードと儲けて来て欲しい」


「承知しました。楽しそうですな」

「ヒヒン」


 観察ちゃんはジェット機に乗って世界各地に進出しているらしい。ドバイとサウジにも駐在観察ちゃんがいるそうだ。観察ちゃんとハビエル神父とトルネードが転移して行った。


 そうか。賞金も両替、送金などをするようだね。エチゼンヤ夫妻に頼もう。

 エチゼンヤ夫妻も観察ちゃんがアラブに送って行った。


 銀行口座を開設しなくてはね。どうするか。名義人はステファニーさん。どこかの国の外交官になればいけそうだ。

 いい国を思いついた。龍愛とステファニーさんに行ってもらおう。


 夜。某宗教国家。統括大僧正王(日本語訳)の枕元が明るくなる。


 訝しく思った統括大僧正王(日本語訳)。目を開くと、神々しい人物が。人ではない。ベッドから転げ落ちて跪く。


「我は神だ。汝、この者を日本国への特派大使とせよ。任期はない。汝がここに署名すれば良い」

 何枚か紙を差し出され署名した。

 署名が終わったら神は消えた。


「はて、夢か。神などいるものか。妄想だ。それにちっこい子供が神だと。笑わせる。もっとも神の妄想のおかげでお布施が集まり、余も部下も楽ができるというものだ」

 統括大僧正王(日本語訳)は夢を見たと思って寝てしまった。


 龍愛はもうちょっと力がついたらあのジジイに天罰を与えてやると息巻いている。


 翌日、某銀行、某銀行、某銀行、郵貯銀行の本店に金髪美女が口座開設に現れた。某宗教国家の特派大使の書類を持っているので口座開設に応じた。銀行口座四つゲットである。


 みずほ銀行には宝くじが持ち込まれた。年末ジャンボ連番当選、2組20億円、ミニ2本1億円、スクラッチ2本8000万円。同一人物がこんなに当たり券を持ち込むのは初めてである。


 持ち込んだのは某宗教国家の特派大使である。行員総出で券が本物かどうか調べた。全て本物であった。一週間後に振り込むということにして、さらに必死で調べたが結局全て本物、一週間後に本人の口座に振り込まれた。21億8千万円であった。


 日本の新聞の片隅に、アラブの競馬場で荒稼ぎする新人騎手ハビエル、馬はトルネード。稼いだ賞金総額20億円超と記事が出た。


 4つのステファニーさんの口座に5億円づつ入金があった。さらにしばらくすると20億円づつ入金があった。すべて某宗教国家からである。


「合わせて100億円か。一つの金融機関20億だから目立たないだろう。それに宝くじの当選金があったか。まあこの辺でいいだろう」

 そう思ったシンである。甘かった。


 ハビエル神父、トルネード、ローコー、エリザベスさんがにこにこと観察ちゃんと転移して来た。差し出す書類は、スイスの某銀行にシンの名義で100億ドル。3人とトルネードでアラブ、壱番国、ヨーロッパ、アフリカ、北の大国、インド、中心国、東南アジアと儲けて歩いたらしい。競馬、賭博、相場、合法的に儲け、非合法の連中からは搾り取ったらしい。そのほか金塊をだいぶ差し出された。細かいことは聞かないことにしよう。


 すべて某宗教国家の宗教活動がらみで綺麗なお金や金塊なのだそうだ。


 実はこういうことがあった、というか仕組んだ。

 某宗教国家。統括大僧正王(日本語訳)の枕元が明るくなる。

 訝しく思った統括大僧正王(日本語訳)。目を開くと、神々しい人物が。また同じ夢かと思ったがどう見ても夢ではない。人ではない。ベッドから転げ落ちて跪く。

 ちっこい子供は同じだが、今度は銀髪の怖そうな若い女を連れている。


「汝、この前、神などいるものかと思ったな。豚にでもなるか」

 ちっこい子供が言う。銀髪女がコップを差し出した。手が勝手に動いてコップの水を飲んでしまった。体が熱をもったようだ。苦しい、熱い、苦しい、熱い、立っていられない。部屋の中を這って動き回る。やや落ち着いてきた。さっきまで着ていた自分の夜着が散らかっている。下着も散らかっている。


 自分の手を見ると豚の前足になっている。悲鳴をあげたらブーブー豚の鳴き声だ。豚になってしまった。

「ブーブーキーキー」(悪魔だ)


 小さい子供が手をかざす。次の瞬間、豚小屋にいた。昼間であるからどこかの国だろう。

「おや、一頭増えているみたいだ。随分肥えているな。痩せる前に肉にしてしまおう。こいつから屠殺だな」

 尻を叩かれてトラックに乗せられた。

「ブーブーキーキー」(助けてくれ)


 しばらく走ってトラックから下ろされた。屠殺場である。

 男が豚を歩かせ、首に細い刃物を刺した。二、三歩歩いて豚が倒れる。死んだら解体である。

 だんだん順番が来た。

「ブーブーブーブー」(神様、助けてください)


 頭の中に声が響いてきた。

『汝、我の信者になるか?』

「ブーブーブーブー」(なります。なります)

『そうか。助かってよかったな。次はお前の番だった』


 気がつくと自室である。バケツに水が入っている。

 銀髪女がバケツを指さす。飲めば人に戻れそうだ。バケツに首を突っ込んで夢中で飲んだ。

 飲み終わったら、人間に戻っていた。慌てて服を着た。


 銀髪女に話しかけられた。

「この国に専用口座を作った。名義人はこの国だ。これだ。この口座に入って来るお金は日本の銀行に送金される。問い合わせがあったら、わかっているな」

「はい。わが国の宗教活動であると言う事でしょうか」

「そうだ。わかりがいいな。金塊なども同様の書類が作られる」


 統括大僧正王(日本語訳)は、神による究極のマネーロンダリングだと思った。


 気がつくとちっちゃい子供と銀髪女は消えていた。バケツだけが転がっていた。夢ではなかった。悪魔のような神だと思った。悪魔との契約は、いや神との契約は守らなければならない。守らなければ豚にされる。


 某銀行。

「おい、なんだこの口座は。5億入金の次は20億だ。上得意様か、犯罪者か。ちょっと調べろ」


 行員が調べ始める。

「口座名義人は、ステファニー ジュノ。へえ外人か。何、某宗教国家の特派大使だと?振り込んだのは某宗教国家か」

 困ったな。


「課長。口座の名義人は、某宗教国家の特派大使です。某宗教国家から振り込まれています。どうしましょう」

「壱番国でもEUでも北の大国でも自称世界の中心国でもないから、聞いてみたら」

「私がですか?」

「お前の他に誰がいる?それともこういう仕事がないどこか田舎の支店にでもいくか」

「聞きます」


 田舎の支店などに行ったら一生浮かばれない。それとも辞めてしまうか。家のローンが始まったばかりだし、そうもいかないか。


 某宗教国家は宗教組織が大使館を設置しているらしい。よくわからない。電話するか。

 電話には日本語で出た。助かる。挨拶ののち聞いた。


「そちらに特派大使のステファニー ジュノ閣下という方はいらっしゃいますか」

「ええと、少しお待ちください」

 だいぶ待った。


「お待たせしました。ステファニー ジュノ特派大使、着任しております」

「着任されたのはいつでしょうか」


「この方に関しては、すべて統括大僧正王(日本語訳)の扱いとなっております。何かお聞きになりたければそちらにお聞きください」


「お会いしたことは?」

「統括大僧正王(日本語訳)にお聞きください」


「武蔵西南市で何をなされているのでしょうか。住所は神社になっているようですが」

「統括大僧正王(日本語訳)にお聞きください」


「閣下の口座に大金がそちらから振り込まれましたが」

「宗教活動です。詳細は統括大僧正王(日本語訳)にお聞きください」


 何を聞いても、「統括大僧正王(日本語訳)にお聞きください」だ。


 最後に違うことを言った。

「貴行は、国家間のお話にしたいのでしょうか?国家間のお話でしたら少なくともまず外務省の上級職から連絡があってしかるべきです。失礼ながらあなた様のご身分は民間の銀行の平行員でしょう?」

 言われてしまった。


「いえ。そういうことではございません。失礼しました」

 危ない。外務省に抗議が来ると、金融庁を巻き込んでえらいことになる。


「課長、何を聞いても統括大僧正王(日本語訳)にお聞きくださいと言っています。それから国家」

「俺は会議だ。忙しい。よく聞こえなかった。適切に処理しておいてくれ」


 統括大僧正王(日本語訳)に聞けだと。そんな危ない話には関わり合えない。外務省が金融庁を巻き込んで頭取が呼び出しをくらう。俺は部下数人のど田舎の出張所長だ。そう思って逃げていく課長であった。


 それからしばらくして、金融庁の監査があった。暇だったと見えて、

「この、5億、ついで20億入金がある口座の口座名義人はどういう方ですか?」

 担当課長、冷や汗である。


「担当はそこにいます。おいこれはなんだね?」

 しらばっくれる課長。鬼のような形相で担当を睨む。首か。


「某宗教国家の特派大使のステファニー ジュノ閣下です」

「本当かね。マネーロンダリングのための身分詐称ではないか。某宗教国家から振り込まれているが確認したのか?」

「大使館に電話し、ステファニー ジュノ特派大使は着任している。振り込みは宗教活動だとの回答を得ています」


「いつ着任したのか」

「統括大僧正王(日本語訳)にお聞きくださいとの回答を得ました」


「なんだそれは」

「わかりません。ただ」

「なんだ」

「貴行は、国家間の話にしたいのか?国家間の話にしたいのなら少なくともまず外務省の上級職から連絡があってしかるべきだ。失礼ながらあなたの身分は民間の銀行の平行員でしょう?と言われました」


 外務省がなんだ。おれは金融庁だと思って、その場で大使館に電話した。返答は、「統括大僧正王(日本語訳)にお聞きください」だった。


「なんだ、訳がわからないな」

「はい、訳がわかりません」

「たしかにな。もうちょっとこの口座名義人を調べるか」


 金融庁の職員のスマホがなった。キャリア組からの電話だ。

「お前、何をやっている。某宗教国家の大司教の大使閣下から長官に直々の抗議電話があったぞ。「貴国は我が国の特派大使に因縁をつけるのか。わが国の宗教活動に因縁をつけるのか。天罰が下るだろう」とえらい剣幕だったそうだ。お前はしばらく地方に行っていろ。あとで人事より連絡があるだろう」

 ブツっと電話が切られた。


 金融庁職員は呆然とした。特派大使の預金口座はアンタッチャブルになってしまった。

 我に返って、土産は持って帰って幾らかでも上の機嫌を直してもらおうと、不正がないかネチネチと銀行業務を調べ始めたのであった。

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